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「風見は優しかった?」

「もう…零さんの意地悪…!」

艶を含んだ笑い声が耳をくすぐる。
安室さん目当てでポアロに通うJK達にとってはご褒美になるのかもしれないが、つい先ほどまで散々翻弄された身体には甘い毒でしかない。

それに加えて今の状況だ。

お風呂の中で、後ろから零さんに抱き締められているこの状況に、今にも頭が沸騰してしまいそうだった。

「風見とデートした君が悪い」

「だから、デートじゃないって言ってるのに…」

「服も選んで貰ったんだろ?」

「そんなに嫌でした?」

「嫌だ」

俺以外の男に服を選ばせるなんて、と溜め息をついた零さんが耳を甘噛みする。

「知らないのか?男が女に自分が選んだ服を着せるのは、その服を脱がせるためなんだよ」

「えー」

「えーじゃない。そういうものなんだ」

「この家にある私の服、殆ど零さんが買ってくれたものなんですけど…」

この世界に鞄一つで放り出された私は、零さんに保護されるまでビジネスホテルを拠点に働き口を探していた。
幸運だったのは、給料日の後である程度現金を持っていたことと、銀行のカードが使えたことだ。
だから、生活するのに必要最低限の物は何とか揃えられた。
零さんに保護された後は、協力者なのだから遠慮はいらないと言われて、経済面では大分甘やかしてもらった。
洗い換えが必要だろうと服や下着を何着も買ってくれたし、細々した物も買い与えてくれた。
だから、零さんにはとても感謝している。
なのに、その零さんが言うことには、

「当然脱がせるために決まっている。だから好きな時に脱がせているだろう」

「零さんのえっち!」

「何とでも。しかし、男の下心も見抜けないようでは、やはり一人で外に出すわけにはいかないな」

「そんなぁ」

あからさまにガッカリした声を出した私が可笑しかったのか、零さんは私の胸をふにふにと揉みながらくすりと笑った。

「だから、今度からは僕と一緒に出掛けよう」

「零さんと?」

「ああ。安室透として、になるけどな」

「安室さんのほうが優しいから安心です」

「言ったな」

ぱしゃん、とお湯を顔にかけられる。

「ひどい…!」

「なまえのほうが酷い」

きっぱりとそう言うなり、零さんは私の腿に手をかけて、ぐいと脚を開かせた。

「そんな酷いことを言う悪い子にはお仕置きが必要だな」

含み笑いとともに、開かれた脚の間の無防備にさらされた場所に零さんの手が入り込んでくる。

「あっ、だめっ」

「駄目じゃない」

何時間もの間零さんを受け入れさせられていたそこは、すんなりと零さんの指の侵入を許してしまった。

「それとも、安室透としての僕に抱かれたほうが燃えますか?」

「やっ…零さん!やめ…」

「ん、締めつけてきた。正直な身体だ」

「んっ、んっ…ちが、零さんだからぁ!」

「僕だから、なに?」

零さんは意地悪な笑みを浮かべながら、くちくちと音を立ててそこをなぶってくる。
お湯が入ってきて少しだけ苦しい。

「相手が零さんだから、こうなっちゃうんですっ」

長年恋い焦がれてきた相手に触れられて悦ばない女がいたら教えて欲しい。
やっと結ばれた大好きな人を受け入れて、身体が素直に反応を示してしまうのは仕方がないことだと思う。

「ごめん。少し意地悪しすぎたね」

零さんの優しい声に促されるように振り返ると、自分と同じように熱を帯びた青い瞳と目が合った。

どちらからともなく唇を重ねあった。
舐め、絡めあい、互いの舌を求めあう。

悪戯な指が引き抜かれ、代わりに大きな質量を持つものが押し当てられた。
何かを言われる前に、自ら腰を浮かせて零さんのものを受け入れる。

このままだとのぼせてしまいそうだと頭の片隅で考えていると、耳元で甘い声が囁いた。

「なまえ…愛してる」

…本当に、のぼせてしまいそうだ。

お湯に浸かっているせいだけでなく、降谷零という、この男の存在に。


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