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■4月28日


「君の言う通りだったよ」

苦いものを滲ませた声音で降谷さんが言った。
その端正な顔立ちには憂いの表情が浮かんでいて、頬や額に貼られた絆創膏が痛々しい。

今日の爆発事件を皮切りに、今から四日間、彼は多忙を極める日々を送ることになる。

同じく、小さな探偵さんも。

「彼はさすがだね。もう気付きはじめている」

「“ポアロの安室さん”があんな怖い顔をしていたら誰だってただ事じゃないとわかりますよ」

「そんなに顔に出ていたか?」

「それはもう悲壮感がたっぷりと」

降谷さんは参ったと言うように小さく息をついた。

しかし、それは仕方のないことだと私はわかっている。
この国を守るために彼はいつでも全力で挑んでいるのだから。
有事の際に『降谷零』としての素が出てしまうのは当然のことと言えるだろう。

「例え後からコナンくんに恨まれることになっても、もう止まることは出来ない」

「そうですね…」

「君は僕を卑怯だと思うか?」

「いいえ。これでも私なりに降谷さんの立場を多少は理解しているつもりです」

「そう言ってもらえると助かるよ。君は大切な協力者だ」

協力者、というと別の人々のことを考えてしまって複雑な気持ちになるが、それでも、降谷さんに協力出来ていると思うと嬉しくもあった。

「何があっても、私は降谷さんの味方ですから」

「ありがとう。心強いよ」

日本屈指の捜査官ではなく、いつもポアロで迎えてくれる時のような優しい笑顔を向けられて胸が高鳴る。
そんな場合ではないのだと自分に言い聞かせながら、私は降谷さんに笑顔を返した。

この人の笑顔はある意味凶器だ。
わかっていてやっているとしたら本当に恐ろしい人である。

「降谷さん、少し休んで下さい。また明日も大変なんですから」

「そうだな…お言葉に甘えて少しだけ仮眠をとらせてもらおうか」

「じゃあ、先にシャワー浴びますよね。着替え用意しておきます」

「すっかり僕の女房役が板についてきたな」

降谷さんは小さく笑ってシャワーを浴びに行った。

冗談のつもりなんだろうけど、心臓に悪い。

好きです、といつか言える日が来るのだろうか。それとも。


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