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今朝、電車の中で痴漢に遭った。

しかし、そこは雄英のヒーロー科に通うヒーロー志望の女子高生、ただ触られただけでは終わらずにしっかり犯人を捕まえて鉄道警察に突き出したのだった。

それで解決すれば良かったのだが、困ったことがひとつ。

「相澤先生、おはようございます」

「苗字」

「はい」

「それはどういうつもりだ?」

相澤先生の髪がざわりと逆立ちそうになったのを見て慌てて弁明する。

「今日登校中に痴漢に遭ったんですが、その犯人の個性のせいなんです」

「猫耳が生える個性か」

その通り。
呆れたように私を見る先生の視線の先には、頭にぴょこりと生えた猫耳があった。

「ちなみに尻尾もあります」

「耳と尻尾だけか?」

「はい、犯人の話ではその二つしか生やせないみたいでした」

猫の日だからということで、電車の中で目についた女子高生に痴漢ついでに猫耳尻尾を生やして楽しんでいたらしい。

そう説明すると、相澤先生は理解に苦しむと言いたげな表情で溜め息をついた。
いかに猫好きな先生と言えども、やはり変態の思考は理解し難いということだろう。

「だから先生に消してもらおうと思ったんですけど」

「俺は異形型の個性は消せない」

「…あっ」

「忘れていたんだな」

「ううっ、先生ぇ…」

「他人に付加する個性には制限付きのものが多い。これも一時的なものじゃないのか?」

「丸一日で効果は消えるって言ってました」

「なら、今日一日我慢しろ」

先生が私の顎の下を手で撫でる。
優しい手つきにびっくりすると同時に、自分ではそんなつもりはまったくなかったのにゴロゴロと喉を鳴らしてしまった。

「本当に猫みたいだな。にゃあって鳴いてみろ」

「先生、遊ばないで下さい!」

「今日一日我慢しろ」

「それさっきと意味違いますよね!?」

「俺は猫が好きだ」

「知ってますけど、でも」

「よしよし」

「あ、また…!」

撫でられると条件反射でゴロゴロ言ってしまう自分がうらめしい。

「そろそろ始業時間だ。行くぞ」

「うう…」

もしかして今日一日先生のおもちゃにされてしまうんだろうか。

でも、先生の手、凄く優しかった。

本当に猫が好きなんだな。

それなら今日だけ、一日だけ、先生の猫になるのもいいかもしれない。

「にゃ……にゃあ」

「なんだ?撫でてほしいのか?」

振り返った先生が小馬鹿にしたように笑う。

やっぱり先生は意地悪だ。


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