焦凍くんが私の膝の上に頭を乗せて眠っている。 耳かきの途中から完全にリラックスモードに入った焦凍くんはそのまま寝てしまったのだ。 あまりに気持ち良さそうにすやすやと眠っているため、起こしてしまうのが忍びなくてこのままの状態が続いているのだが、そろそろお昼だ。 と思っていたら、やはり冬美さんが呼びに来てくれた。 さらりと障子が開いて冬美さんが顔を覗かせる。 「焦凍、なまえちゃん、お昼出来……」 私達の状況を目にした冬美さんは言葉を飲み込んだ。 それから、とってもいい笑顔を浮かべて、「お邪魔しましたー」と障子を閉めようとしたので、私は慌てて焦凍くんを起こしにかかった。 「焦凍くん、ご飯だよ!」 「ん……」 手の甲で目元を擦った焦凍くんが、まだちょっと眠そうにしながら身体を起こす。 膝の上から無くなった重みを、少しもったいなく感じた。 「わりィ…完全に寝てた」 「いいよ。疲れてたみたいだし気にしないで」 「久しぶりにぐっすり寝た気がする。お前の膝枕が気持ち良かったからだな」 焦凍くん、嬉しいけど、冬美さんが微笑ましそうににこにこしてるのがめちゃくちゃ恥ずかしいよ…! 「膝枕が気に入ったならまたいつでもしてあげるから」 「ああ、頼む」 こういうところが焦凍くんなんだよなぁ。 天然というか、真っ直ぐで素直というか。 「顔が赤いけど大丈夫か?暑いなら冷やしてやる」 「あ、うん、ありがとう」 焦凍くんの右手から冷気が漏れ出てきたかと思うと、彼はその手をぺたりと私の額に当てた。 ひんやり冷たくて気持ちがいい。 額に当てられていた手が頬に滑り降りて、優しく包み込む。 思わずほうと息をついた時、冬美さんがそっと障子を閉めようとしているのが見えた。 「待って冬美さん!ご飯いただきますから!」 「でも、邪魔したら悪いし」 「邪魔じゃないです!ごめんなさい!」 何故私がこんなにも必死になっているのかわかっておらず、焦凍くんはきょとんとしている。 それはそれで可愛いけど、焦凍くんのせいでもあるんだからね! 「じゃあ、運んで来るわね」 「あ、手伝います」 「いいのよ、なまえちゃんは焦凍の相手をしてて」 「すみません、冬美さん。ありがとうございます」 「気にしないで。未来の可愛い弟夫婦のためだもの」 「冬美さん…!」 「まだ熱いな。もう少し冷やすか」 焦凍くんが私の頬を優しく撫でる。 お昼は焦凍くんの好物でもあるお蕎麦を頂いた。 |