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放課後、轟くんをファストフード店に寄らないかと誘ったのは、ありがちな好奇心からだった。

飯田くんもだけど、有名なヒーローの家系に生まれたお坊っちゃまが体験する、『生まれて初めてのファストフード』にどんな反応を示すか見てみたかったのだ。

何より、体育祭が終わってからは幻のようにあの近寄りがたさが消え失せ、クールだけどちょっと天然なイケメンというキャラを確立した彼に興味があったからである。

「別に構わねぇ」

断られるかと思いきや、轟くんはあっさりと承諾してくれた。

そこで私は雄英から一番近いファストフード店に彼を連れて行ったのだった。

「何か食べたいのある?」

「そうだな、このテリヤキバーガーってやつがいい」

「セットにすると、ポテトと飲み物がついてお得だよ」

「ならそれにする」

カウンターで注文を済ませて、隣の受け取り用のカウンターで出来上がりを待つ。
轟くんには先に座っていていいよと言ったのだが、彼は作る様子に興味があったようで、ここで待つと言ったため、二人で中の様子を眺めることにした。

業務用フライヤーで揚げていたポテトが揚がったことを知らせるあの独特なアラーム音が鳴り、担当のスタッフが手早くポテトを紙製のケースの中に入れる。
同じく、出来上がったハンバーガーを紙包みに包み、ドリンクを用意する。
それらの一連の動作を、轟くんはじっと観察していた。

番号を呼ばれたので、出来上がったセットを受け取り、トレイを持って席に向かう。

「いただきます」

「いただきます」

テーブル席に向かい合って座り、それぞれポテトに手を伸ばした。

「なあ、これ油っこくねぇか?」

「あー、慣れてないとそう感じるかもね」

轟くんのおうちでは、きっと三食きちんとしたご飯を食べさせてもらってきたのだろう。
そうした食事が当たり前になっていた舌には、たっぷりの油で揚げて塩をふっただけの大味なポテトはかなり衝撃的だったに違いない。

「食べられなさそう?」

「いや、これはこれで面白い味だから食える」

「そっか。ハンバーガーはどう?」

「美味い」

「あはは、良かった」

さすが食べ盛りの男子。
ハンバーガーのセットをあっという間にたいらげてしまった。

「今日は楽しかった。次は俺から誘う」

「ほんと?楽しみにしてるね」

「ああ。次はちゃんとデートらしくなるよう気をつける」

「デ、デート!?」

「違うのか?」

「いや、えっと」

「俺はデートだと思ってた。もちろん今度もそのつもりで誘う」

「轟くん…私のこと好きなの?」

「ああ」

轟くんはあっさり肯定してのけた。

「好きな女に放課後デートに誘われて、断る男がいるわけないだろ」

全くもってごもっとも。
悔しいことに、轟くんのほうが一枚上手だった。


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