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本丸から出られなくても、大抵の物は政府が用意したパソコンのネット通販で買える。
今も、報告書を作成したついでに通販サイトを見ているところだった。
傍らには薬研藤四郎がいて、興味深そうに画面を眺めている。

「これで何もかも揃っちまうんだから凄いな」

「本当にね」

お昼時だからかお腹が空いた。
もうすぐ燭台切が呼びに来るはずだ。
その前に、とマウスを操作して食料品の項目を呼び出す。

「何か食べたいものある?」

「俺はいいが、弟達に団子か何か頼んで貰えると助かる」

「みたらし?」

「ああ」

「万屋はみたらし団子無くなっちゃったんだよね」

「大将も好きだったのにな」

「うん、残念」

とりあえずみたらし団子のパックを30個注文しておいた。
これだけあれば食べ盛りの短刀達のお腹を満たせるだろう。

「大将、これはなんだ?」

「あー、バレンタイン特集か。もうそんな時期なんだね」

特集のところをクリックすると、赤いリボンに縁取られた特集ページに飛んだ。
そこからバレンタインの由来というリンクをクリックして、出てきた画面を薬研に見せながら簡単にバレンタインについて説明する。

「薬研もチョコ欲しい?」

「そうだな」

薬研は真面目な表情で頷いてみせた。
紫苑色の瞳が真剣な色を浮かべてこちらを見据えてくる。

「俺は」

「うん」

「大将の本命チョコが欲しい」

「えっ」

「って言ったら困らせちまうんだろうな」

苦笑した薬研がそっと頬に手を添えた。
整った顔がゆっくりと近付く。

「大将……俺は、」

その途端、スパーン!と音を立てて障子が開き、思わずびくっと身体が跳ねてしまった。
開いた障子の向こうには近侍の長谷部が仁王立ちして薬研を睨みつけている。
恐らく少し前からそこにいて声をかけるタイミングをうかがっていたのだろう。

「薬研…貴様っ!」

「おっと。見つかっちまった」

頬から手を離した薬研が、すくっと立ち上がる。

「じゃあな、大将」

「あ……うん」

「後は任せたぜ」と、ぽんと長谷部の肩を叩いて廊下を去っていく。
長谷部はギリギリと音がしそうなほどきつい表情で薬研を睨みつけていたが、その姿が視界から消えると、憮然として、その場に膝をついた。

「燭台切が昼餉の用意が出来たというのでお迎えにあがりました」

「そっか、ありがとう」

「…主」

「ん?」

「本命チョコとやらは俺に下さい」

「長谷部くん、抜け駆けはよくないよ」

廊下からひょいと燭台切が顔を見せた。
エプロン姿がまたよく似合っている。

「呼びに行って貰ったのになかなか戻って来ないから、様子を見に来たんだ」

まったく、君達は。
と呆れたように燭台切がため息をつく。

「なまえちゃんの本命チョコは僕が貰うんだよ」

「なんだと!貴様ァ!」

「言っただろ、抜け駆けはよくないって。こういうことは格好良く決めたいよね」

二人が言い争いを始めたので、なまえはパソコンを閉じ、そうっと立ち上がった。

「さーて、ご飯食べに行こうかな」

「主!!」

「なまえちゃん!!」


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