初めて見た時に思ったのは、「大きい」だった。 何しろ、身長がある上に体格がいいので迫力があったのだ。 というか、ちっとも小じゃない。 その刀剣男士の名は、小狐丸と言った。 「小狐丸、だめっ」 畳の上を這って逃げようとするのを、腰を掴まれ、呆気なく引き戻される。 すかさず背後から覆い被さってくる大きな身体。 小狐丸の豊かな長い髪がさらりと流れ落ちてくる。 月の光を受けて輝く美しい髪が。 まるで蜘蛛の糸のように手や肌の上を滑り降りて、背筋がゾクッとした。 「ぬしさま」 「ひっ…!」 髪を掻き分けられ、うなじにぴとりと鼻を押し当てられて情けない声が漏れた。 そのまま、くんくんと匂いを嗅がれる。 「ぬしさまの香りが致しまする。私を誘う、麝香の如き、かぐわしい香りが」 「や…やめ…」 「何故です?この小狐が恐ろしいのですか?」 ふっと笑った息が肌を撫でる。 くすぐったさに身をすくめると、肌に柔らかい感触が押し当てられた。 続いて、硬い牙が皮膚の表面をなぞるようにゆっくりと動いていく。 「何も恐れることはありません。貴女さまの小狐丸でございますよ」 ぬしさまはこの毛並みがいいとおっしゃる。 お姫様抱っこもして差し上げましたね。 ぬしさまがおやすみになられていた時には膝枕も。 毛づやが良くなりそうな刀装も賜りました。 馬に無視された時には楽しそうに笑っておられましたな。 さらに大きくなって戻ってきました折には、この毛並みを撫でて褒めて下さった。 畑の大豆は大きく実り、ぬしさまが手ずから作って下さった油揚げの味は生涯忘れませぬ。 「お願い…許して…」 滔々と語る小狐丸の身体の下で、ただ震えていることしか出来ない。 逃げられない。 片腕でしっかりと抱え込まれて、もう片手は着物の胸元に侵入し、妖しく蠢いている。 大きな手に直に胸を揉みしだかれて、熱い吐息がこぼれ落ちてしまう。 駄目なのに。 抵抗しなければいけないのに。 胸の頂を指で擦られ、ピンと弾かれると、もう駄目だった。 「ひ、んっ!」 「優しくして差し上げようと思ったのですが、獣の交尾をお望みですか」 小狐丸が笑う。 その声の底に舌なめずりするような響きがあった。 肉食獣が獲物をなぶる時のような。 「あ、あ、ちが、」 「噛まれると痛いですよ……野性ゆえ」 言葉通り歯を立てられる。 首筋を甘噛みされて、大きく身体が震えた。 恐怖と、快楽の予感に。 |