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明け方早くに目が覚めた私は、寝間着のままでふらふらと台所へと向かっていた。

思った通り台所には既に光忠がいるらしく、廊下にまで何やら良い匂いが漂ってきている。
食欲をそそる香りだ。
敏感に反応したお腹がきゅうと鳴いた。
誘われるように台所に入っていく。
そこにはやはり光忠がいて、朝餉の支度をしていた。

「光忠…」

「おはよう。早いね」

だし巻き玉子を巻いている光忠の腰に後ろから抱きつくと、笑い混じりの挨拶が返ってくる。
綺麗に巻いた玉子をフライパンからまな板の上に移し、丁度良い大きさに切っていく手際の良さは、さすが本丸のお母さんといった風情だ。
私はしっかりと背筋がついたその広い背中に顔を擦り寄せて彼に甘えた。

「光忠…光忠」

「わかっているよ。ほら、あーん」

あーんと口を開ければ、温かい玉子焼きを箸でそこに運ばれる。
あつ、あつ、となりながらも、出来たての玉子焼きを味わう。
今日も最高に美味しい。
もぐもぐ咀嚼している横で、光忠は手早くおにぎりを作って渡してくれた。

「早起きするとお腹がすくのは相変わらずだね」

「どうしてだろう。普通に起きた時はそうでもないのに」

光忠が握ってくれたおにぎりを食べながら首を傾げる。
手を洗った光忠が爽やかに笑った。

「でも、僕の作ったものを喜んで食べてくれるのは嬉しいよ」

「光忠…光忠」

「ふふ、今朝は甘えん坊だね」

今度は正面から抱きついて、彼の逞しい胸板に頬擦りする。
光忠はイイ身体をしているから抱きしめ甲斐がある。
何だか良い匂いがするし、あったかい。

「なまえちゃん」

手で頬を包み込まれ、顔をあげさせられた。
額に落とされたキスだけでは物足りなくて、口にもしてとねだろうとしたら、それを察したように唇に口付けられた。

「可愛い」

甘く低い声で囁いた唇が私の唇を食む。
ぺろ、と舐められ、舌が口内に入ってくる。
そのまま深く深く口付けられて、私は夢中でそれに応えた。

「光忠…すき」

「僕もだよ。愛してる」

髪を撫でる手が優しい。
名残惜しそうに離れていった唇が、綺麗な笑みを浮かべた。

「僕の可愛い姫君。何か食べたいもののリクエストはあるかい?」


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