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今日はみんなでピクニックに来ている。
と言っても、審神者と刀剣男士にあちこち遊びに行く自由があるはずもなく、本丸のある里山の拓けた丘の上に来ているのだが、そこには花畑や木登りが出来そうな大木があり、短刀達は思いきりはしゃいで遊んでいた。

「はい、主さんにあげる」

「ありがとう」

乱藤四郎に頭に花冠を乗せられ、なまえは嬉しそうに礼を言った。

「凄く綺麗。よく作れたね」

「でしょ?いち兄と読んだ本に載ってたんだ」

刀剣達にはなるべく不自由をさせないようにと、欲しがるものはよっぽどのことがない限り出来るだけ買い与えている。
彼らの興味の対象は絵本から専門書まで様々だ。
それらの中に花冠の作り方が載っていたらしい。

「ちょっといいかな」

乱が長谷部に何やら耳打ちをしている。
それに気づかないふりをして、なまえは光忠と歌仙が作ったお弁当に手を伸ばした。
箸でアスパラとチーズの肉巻きを摘まみ、口に運ぶ。

「美味しい!これはどっちが作ったの?」

「僕だよ。気に入ってくれて良かった」

「美味しいよ光忠。さすがだね」

「玉子焼きはどうだった?あれは自信作なんだ」

「玉子焼きは歌仙なの?うん、上品な味」

遊んでいた短刀達が戻って来てお弁当を食べはじめたので、場所を譲ってなまえは大木の木陰に移動した。
そこへ、後ろ手に何かを隠した乱達が長谷部を連れてやって来て、なまえを取り囲むように立った。

「主さん、ちょっと目を閉じてて」

「こう?」

なまえが目を閉じると、小さく忍び笑いが聞こえてくる。

「さあ、早く」

乱に急かされた長谷部がなまえの左手をとった。
そっと持ち上げ、その薬指に何かを滑り込ませる。

「主さん、もういいよ」

なまえが目を開けると、左の薬指に白い花で作った指輪がはめられていた。

「これ……」

「お慕い申し上げております、主」

真摯な表情で長谷部がなまえの手をとったまま告げる。
すると、頭上から色とりどりの花びらが降って来た。
乱達が隠し持っていたのはこれだったのだ。

「おめでとう!」

「お似合いですよ」

「おめでとうございます」

口々に祝福の言葉を浴びせられ、面食らってしまう。

「すみません。どうしてもと言われて」

長谷部が生真面目に謝罪した。
なまえは笑って彼の左手をとった。

「乱ちゃん、もうひとつ指輪作ってくれる?」

「そう来ると思った」

乱は嬉しそうに笑うと、なまえがはめているものと同じ白い花で作った指輪を差し出した。
それを受け取り、長谷部の薬指にはめる。

「汝、病める時も健やかなる時もこの者を愛すると誓いますか?」

薬研が面白そうにそう告げると、長谷部は「当然だ」と鋭く答えた。

「俺は常に主のために」

「ああ、ダメダメ!はい、誓います、でしょ!」

「…誓います」

「主さんは?」

「はい、誓います」

なまえはすぐに答えた。
例えごっこ遊びでも、これは嬉しい。

「では、誓いの口づけを」

薬研が言うと、長谷部は彼を睨みつけた。

「お前達、いい加減に……」

「長谷部、キスしてくれないの?」

「主…!い、いえ、俺は…!」

「ふふ、ごめん。ちょっといじめすぎちゃったね」

乱達がお弁当を食べている短刀達に呼ばれてそちらに駆けていく。
それを見送ったなまえの頬に長谷部が手を当てた。

「先ほどの誓いは嘘偽りではありません」

そう告げた唇がそっと重ねられる。

「今は、こんな形でしか出来ませんが、いつかは……」

「うん」

なまえは長谷部の左手に指を絡めた。

「いつか、本当のお嫁さんにしてね」


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