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夏と言えば、怪談。

実を言うと怖い話は苦手なのだが、怖いもの見たさでつい見たり聞いたりしてしまう。
そして夜眠れなくなるまでがデフォである。

今回もまさにそうだった。
夏の終わりにパソコンで見た怖い話に完全にビビってしまい、光忠に泣きついたのだ。

「光忠ぁ…!」

「やれやれ、仕方がない子だね」

光忠がぽんぽんと私の頭を優しく叩く。

蚊帳の中に敷かれた布団はひとつ。
しかし、それは大太刀用の大判布団で、二人で寝ても充分余裕がある。
今晩だけだから、と光忠を説得して一緒に寝てもらうことになったのだ。

「ほら、おいで」

光忠に促されて布団に入る。
灯りを消した光忠もすぐに布団の中に入ってきた。

「もう秋の虫が鳴いているね」

「そう…?」

「虫の声も耳に入らないくらい怖いんだね」

「うう……!」

横向きに寝ている光忠の厚い胸板に顔を埋めて、深呼吸。
ああ……いい匂い。

「こうしてると安心する」

「うーん…男としては複雑だね」

「光忠、大好き」

「僕も大好きだよ、なまえちゃん。愛してる」

緩く抱きしめられて、優しく髪を梳かれ、うっとりと目を閉じる。

「ところで、これは演練の時に聞いた話なんだけど。ある本丸では、夜な夜な若い女性のすすり泣く声が……」

「光忠!」

「はは、ごめんごめん」

「光忠の意地悪…」

「どうしてかな。可愛い子ほどいじめたくなるんだよね」

「意地悪するなら青江に代わってもらうから」

「それは駄目だよ」

優しくもきっぱり告げると、光忠は私の顔を上げさせた。
片方は眼帯で隠されているけれど、もう片方の眼はまるで燭台の炎のような不思議な色合いをしている。
それが細められ、近付いて来たかと思うと、ついばむように口付けられていた。

「君にこんなことをするのは僕だけにしてもらいたいからね」

「…意地悪しない?」

「もうしないよ。今夜は」

優しく、優しく、してあげる。

そう言って覆い被さってきた光忠の逞しい身体に腕を回して、次第に深く情熱的になっていく口付けと、蕩けそうな愛撫に身を任せた私の頭からは、すっかり怖い話のことなど消え失せていたのだった。


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