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今日は冬至なので、夕餉の時にカボチャが入った冬至粥を食べた。
とても美味しかったし、短刀達も喜んでいたので作って貰って良かったと思う。

この本丸で暮らし始めて以来、季節に即した行事はなるべくやるようにしている。
まだ審神者になる前、一人暮らしをしていた頃には考えられなかった生活だ。
朝から晩まで働いて、家には殆ど寝に帰るだけの日々だった。
それが変われば変わるものだ。

今の生活のほうが、“生きている”と実感出来る。
文字通り命がけで戦っている刀達と苦楽を共にしているお陰だろう。
本当に彼らには感謝しかない。

そして、今は湯船一面に柚子が浮いている柚子湯に浸かっているところだった。
湯に入れるものだからと、歌仙が厳選してくれた柚子からは良い香りが立ち上っている。
その香気を思いきり吸い込んで深呼吸をすると、身体から余計な力が抜けていった。

「はあ……」

「気持ち良いですか?」

「うん。疲れが癒えていくね」

「そうですね」

後ろから私を抱きしめている長谷部に身体を寄りかからせる。
すると、長谷部が私の腕を取り、湯の中でするりと撫でた。
恋人繋ぎのように指を絡ませ、軽く握って離す。

「主のお身体は綺麗ですね。どこもかしこもすべらかで、触れていて心地よいです」

「長谷部も素敵だよ。かっこいい」

「ありがとうございます」

私の体重を受け止めている長谷部の身体は逞しく、強靭さとしなやかさを兼ね備えている。
どこもかしこも美しいのは長谷部のほうだ。
こうして触れ合っていると心からそう思う。

「そういえば、クリスマスの飾り付けどうなった?」

「一期一振が主導して行う手はずになっています。短刀達も喜ぶでしょう」

「そっか、楽しみだなぁ」

「俺には期待して下さらないのですか」

きゅっと抱きしめられる。
思わず笑ってしまった。

「大好きだよ、長谷部。だから拗ねないの」

「拗ねてなど」

「長谷部が私の一番だからね」

だからこそ、ここまで身を委ねることが出来るのだ。
そこのあたり、ちゃんとわかってほしい。

「主……」

首筋にちりっとした痛み。痕つけたな。

「こら、お湯が汚れるから後でね」

「待てというのなら、いつまでも。貴方は迎えに来てくれますから」

「うん」

身をよじって長谷部に口づける。
ちゅっちゅと軽く触れるだけのキスをすると、抱きしめている腕がぴくりと動いたが、それ以上何か仕掛けてくることはなかった。
待てが出来て偉いね、長谷部。

「クリスマスプレゼントは楽しみにしていてね」

「はい。俺からも贈り物を用意してありますよ」

「本当?楽しみ!」

そろそろ上がりますか、と言われて頷く。
ざばりと湯の中から立ち上がると、何とも言い難い柚子の香りが身体を包み込んだ。

移り香という単語が頭に浮かぶ。

長谷部の手によってタオルで身体を拭かれながら、今夜はお互いにこの香りを身に纏ったまま抱き合うのだと思い、思わず笑みが漏れた。

長い夜を過ごすには丁度良い。

「主?」

「ううん、何でもない」

首を振って、長谷部の端正な顔立ちを伝い落ちる汗をタオルで拭いてあげた。
熱い彼の身体からはやはり柚子の香りがした。


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