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何度も墨俣・承久の乱に通い、ボスを倒すこと数えきれず。

ついに我が本丸にも小狐丸がやって来た。
夏の暑い日のことである。

「大きいけれど小狐丸。いや、冗談ではなく。まして偽物でもありません。私が小!大きいけれど!」

そう自己紹介した小狐丸は本当に大きくてびっくりしてしまった。
しかし、打ち解けてみれば気さくな良い子で、私はたちまち夢中になった。

「ぬしさまはこの毛並みがいいとおっしゃる」

長い髪がうなじに貼り付いて暑かろうと、櫛で丁寧にくしけずってからひとつにまとめて束ねてあげると、小狐丸は満足そうに言った。

「綺麗な髪だね。羨ましい」

「いえいえ、ぬしさまの御髪のほうが美しい」

小狐丸が私の髪をそうっと撫でる。
美容院にも行けていないので、そんなはずはないのに、小狐丸があまりにうっとりと愛おしげな眼差しで見つめるものだから、何だか恥ずかしくなってしまった。

「さあ、かき氷食べよう」

光忠がおやつにと持って来てくれたのだ。
私と小狐丸の二人分。

「これはまるで血のような赤」

「いちごシロップだよ」

物騒な例えをする小狐丸に苦笑して、スプーンでかき氷を掬う。
それを口に運べば、小狐丸も見よう見まねでかき氷を食べた。

「どう?美味しい?」

「はい、とても。身体の内側から冷えて涼しくなっていくようでございますな」

「うん、夏はやっぱりかき氷だよね」

どうやら気に入ってくれたようだ。

しゃりしゃり、さくさく。
ガラスの器に盛られたかき氷はあっという間に無くなった。

「冷たくて美味しいけど、舌が赤くなっちゃうのがちょっとね」

「どれ…」

私が舌を出して見せると、小狐丸も同じように赤く染まった舌を見せた。

「これはこれで風情がありまする」

「そう?」

「ええ、赤く染まったぬしさまの舌の愛らしいこと。この小狐丸めに味見させては頂けませんか」

「えっ、あの…」

小狐丸におとがいを持ち上げられて焦った私は、思わず両手で小狐丸の口を押さえた。

「ふふ…」

「ひゃっ!」

その手の平をべろりと舐められて慌てて手を離す。

「本当に、愛らしいお方だ。ぬしさまは」

「もう…!からかわないで」

「お怒りになったお顔も愛らしゅうございますよ」

「もう、小狐丸のばかっ」

夏の青空に小狐丸の朗らかな笑い声が吸い込まれていった。


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