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世間ではようやく桜の開花が始まった頃だろうか。
春の景趣に変えた本丸では、もう桜が満開だった。
そろそろお花見をしようかと光忠達と相談しているところである。
料理上手な刀が揃っているので、今から彼らが作る花見弁当が楽しみだ。

そんなことを考えてふわふわした気分でいる時に、近侍の薬研が離れにある私の部屋にやって来た。

「薬研?どうしたの?」

仕事の話かと素早く思考を切り替えた私に、しかし、薬研はまったく思ってもみなかったことを言い出した。

「大将、苺、好きか」

「えっ、うん?」

「これ、バレンタインのお返し」

「あっ」

「燭台切に教えてもらって作ったから美味いとは思うが、見かけがイマイチなのは初めてなんで許してくれ」

ラッピングされた袋を渡しながら照れくさそうに言う薬研の白い頬には、ほんのりと赤みがさしている。
それを見た瞬間、何故だか物凄く欲情した。

「薬研っ」

「おっと」

薬研は少しふらつきながらも私を抱きとめてくれた。
こんなに細いのにちゃんと男なのだと思うときゅんきゅんして堪らない。

「すっごく嬉しい!ありがとう!」

「そうか、喜んでもらえて良かった」

「ふふ、薬研の手作りなんて嬉しいな。苺のクッキーなの?」

「ああ。苺の生クッキーだそうだ」

苺の生クッキーって、また難しそうなものを。
見れば、薬研の言う通り生のままの苺がクッキーに練り込まれている。

「早速食べてもいい?」

「もちろん」

私はクッキーをひとつ摘まんで食べてみた。
うん、美味しい。
中に混ぜた苺の果肉は瑞々しいまま、クッキー部分はさっくりと焼き上げるのはどうやったら出来るのだろう、と不思議に思いながらもありがたく味わわせてもらった。

「凄く美味しい。ありがとう、薬研」

「それを聞いて安心したぜ。どういたしまして、だ。大将」

「こっちも美味しそう」

…しゅるり。
密やかな音を立てて薬研のネクタイを抜き取る。
そうして薬研の襟元をくつろげると、晒された白い首筋に吸い付いた。

今食べたばかりの苺のような赤い痕が肌に刻み込んでいく。

「俺ばかりされるのはずるいな」

「あ」

やや強引に着物を割り開かれる。
ぷるんとこぼれ出た胸の膨らみに吸い付いた薬研の髪を優しく撫でてあげながら、彼の手を脚の間に導いた。

既に兆し始めた彼のズボンの前を見て、ぺろりと唇を舐める。

「ん、ん、薬研…」

器用に動く薬研の手が湿った音を立てるのを聞いた私は、彼のズボンのファスナーを下ろして、窮屈そうだったそれを解放してあげた。

覆い被さってくる薬研の背中に腕を回し、苺味のキスを交わしながら、自分から両脚を開いて彼を受け入れていく。

「美味しく食べてね」

「任せろ、大将」


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