「誕生日おめでとう」 そう言われて、面食らってしまった。 にっかり青江と言えば、つい先日、「君の目が無いことだし、楽しんでこようかな」などと微妙に失礼なことを言いつつ遠征に赴き、先ほど帰って来たばかりだったのだが。 「どうしたんだい、そんな顔をして」 いつもの薄笑いを浮かべて青江が言った。 「僕が居なくて寂しかったかな?お土産だよ」 「あ、ああ、うん、お土産ね。ありがとう」 「うん。それで、こっちは誕生日プレゼントだよ」 青江から受け取ったのは、遠征先で見つけたという資材と、綺麗な蜻蛉玉の根付け。 「可愛い…!」 「喜んでもらえて何より。帯に挟んで使うといい」 「うん、ありがとう!」 「どういたしまして」 まさか、青江が私の誕生日を知っているとは思わなかった。 以前長谷部には聞かれたので教えたことがあるけれど。 「水くさいじゃないか。僕だって君の誕生日を祝いたいと思っているんだよ」 「青江が?」 「君がどう思ってるか知らないけど、僕はちゃんと君を大切に思っているよ」 「そ、そう…」 何だか恥ずかしい。 青江に対する私の気持ちがバレている気がして焦ってしまう。 「まだわからないのかい?」 少し体温の低い青江の手が、私の頬を包み込む。 「君が好きだよ、なまえ」 「青江…」 「主に仕える刀としてだけじゃなく、一人の女性として君が好きだ」 「本当に?」 「もちろん。嘘なんかじゃないさ」 まだ信じられないでいる私に、青江が面白がっているような声で告げた。 「がっついたほうが負けるんだよ、こういう時はね。つまり、僕の負けだねえ」 僕らしくもない、と自嘲する青江の手に自分の手を重ねて、私は思い切って本心を伝えることにした。 「私も青江が好き。ずっと好きだった」 「ありがとう、なまえ」 「ありがとうは私のほうだよ。こんな素敵な誕生日プレゼントをもらって」 「フフ、せっかくの誕生日だから、プレゼントに僕もあげようか。受け取ってくれるかい?」 「喜んで!」 青江に抱き締められて、天にものぼる心地でいたら、 「僕は経験豊富だからね。色々と楽しめると思うよ。色々とね」 妖しく微笑む青江に、ちょっと期待してしまったのは内緒にしてほしい。 もちろん、その夜は、言うまでもなく色々と楽しませてもらった。 色々と。 |