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予想通り、というか想像以上だった。

何のことかというと、長谷部のモテっぷりだ。

無理もない。
端正な顔立ちに、惜し気もなく晒された鍛え抜かれた裸の上半身といい、ハーフパンツから伸びた長くしなやかな脚といい、今の長谷部はビーチ中の女の子の視線を独占している状態だった。

「どこから来たんですか?」

「一緒にパラセーリングやりません?」

「筋肉凄いですね。何かスポーツやってるんですか?」

「向こうで一緒に泳ぎましょうよー」

かき氷を両手に歩く長谷部の周りをガッチリ固めて群がっている様は、まるで砂糖菓子にたかる蟻のようだ。

「邪魔だ、退け」

見るからに迷惑そうな顔で邪険にあしらわれているのに、女の子達はめげずに彼にまとわりついている。
最近の子は強いね。

でもそろそろ助けてあげないとさすがに可哀想かもしれない。

「長谷部、こっちだよ」

ビーチチェアから立ち上がって手を振ると、長谷部はパッと顔を輝かせ、女の子達を振り切って小走りにやって来た。

「お待たせしました」

「大丈夫?ごめんね、一人で買いに行かせて」

「いえ、主命を果たすのは当然のことです」

あまりに得意気に言うので、思わず両手を首に回して引き寄せてキスしてしまった。
途端に、きゃー!、とか、いやー!、とか叫び声が上がったが、長谷部は気にしていないようで、嬉しそうに口付けを返してくる。
結果として見せつける形になってしまったけれど、まあ仕方がない。

「さあ、溶けない内に食べよう」

「はい」

長谷部が買ってきてくれたマンゴーかき氷を食べる。
果肉がシロップに混ざっていて、しゃりしゃりと食感もよく、冷たくて美味しい。

長谷部は、と見れば、何やら神妙な面持ちで食べている。

「美味しい?」

「はい。初めて食べましたが、暑い夏には丁度良い甘味ですね」

「気に入ったみたいで良かった」

「これは簡単に作れるものなのでしょうか?何やら機械を使って氷を削っていたようですが」

「うん、かき氷器があれば本丸でも簡単に作れるよ」

「では、是非俺に作らせて下さい。俺が作ったかき氷をなまえ様に食べて頂きたいのです」

「ありがとう、凄く楽しみ」

かき氷を食べ終えた長谷部がこちらへ上体を傾けて来たので、私も顔を傾けて口付けを受け入れた。
かき氷で冷えた長谷部の舌が口腔を舐め、同じくひんやりしている私の舌を吸い上げる。
巧みなそれに溺れてしまいそうになるのを、長谷部の厚い胸板に手を突いて何とか踏みとどまった。

「甘い、ですね」

「うん。長谷部も」

帰ったら早速かき氷器を取り寄せないと。


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