なまえと幸村はウォータースライダーの順番待ちの列にやって来た。

「やっぱりちょっと並ぶみたいだね」

「そうだね。でもこれならすぐ順番が回ってくると思うよ」

幸いなことに今日はまだそれほど混んではいないようだ。
近くのスピーカーからはハイテンションな曲が流れていて、気分を盛り上げてくれる。

徐々に順番が近づいてくると少し緊張してきた。
高い所へゆっくり上がっていくから、そのせいもあるかもしれない。

「きゃー」という女の子の叫び声が上から下へと遠ざかっていく。
思わずびくっとしてしまうと、大丈夫だよというように握った手に少し力がこめられた。

そうする内に、遂に、なまえ達の順番が回って来た。

このウォータースライダーは二人乗りなので、前のカップルは彼氏が後ろ、彼女のほうが前に座って乗ったようだ。

「俺が後ろでいいかな?」

「うん。そうして貰ったほうが安心する」

「悪戯するかもしれないけど、いいよね?」

「だめ!」

幸村に後ろになって貰い、ゴムボートに乗り込む。
一応、サイドに掴む場所があったので、なまえはそこをしっかりと握りしめた。

すぐ目の前に急な傾斜がある。
なまえはごくりと喉を鳴らした。
後ろから小さな笑い声。

「大丈夫かい?」

「う、うん」

「じゃあ行くよ」

出発!と係員の男性にゴムボートを押される。
なまえ達を乗せたゴムボートは、水とともにパイプ状のウォータースライダーを勢いよく滑り落ちていった。

真っ直ぐ落ちていったかと思うと、急カーブして左へ、そして今度は右へ。

ぐるぐると回りながら落ちていき、最後は長い急な直線になっていたところを一気に落下していった。

「!」

ざぶんっ!と水面に着地して、暫く惰性で水面を滑った後、ゴムボートは止まった。
体重のせいでやや傾いたそれから一度水中へ落ちたなまえを幸村が軽々と引き上げてくれる。

「面白かったね」

「そ、そうだね」

幸村に手を借りてプールサイドに這い上がる。
ゴムボートは係員が回収していった。

「さあ、次に行こう」


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