鮮やかなシュプールを描きながら白い斜面を滑り降りて行く赤屍さんの広い背中を、惚れ惚れしながら見つめる。 いつもの“仕事着”同様、漆黒のスキーウェアを纏ったその姿は、さながら黒い疾風だ。 ゲレンデの冷たい空気を切り裂いて進んでいく。 同時にスタートしたはずなのに、彼はもう麓のレストハウスまで辿り着いて一息ついていた。 やっぱり敵わないなあ。 ちょっと悔しくなった私は悪戯を思いつき、彼の目の前でわざと雪を蹴立てて止まってみせた。 パッと跳ね上がった粉雪が漆黒のウェアに散り、それを白く彩る。 「おやおや、こんな悪戯をして……悪い子ですねぇ」 苦笑した赤屍さんがゴーグルをはずしながら体についた雪を手で払い落とした。 「お仕置き、しますか?」 頬を染めながらそんな事を言われては、きっと誘っているように見えるだろう。 勿論そのつもりで言っているのだが。 「お仕置きされたかったんですか」 そう言って笑う赤屍さんは、私をどう料理してやろうかと思っているに違いない。 私も随分大胆になったものだと思う。 自分からおねだりするみたいなことを言うなんて、前はとても考えられなかった。 でも、それもこれも、全部赤屍さんがこんな体にしたせいだ。 責任は取って貰わないと。 |