「誰だ?」 「すみません!助けて下さい!」 尾形さんの問いかけに必死な様子の男性の声が答えた。 「私達、車が事故に遭って遭難しかけたんです」 続いて聞こえてきた女性の声に、私達は顔を見合わせた。 尾形さんがドアを開けると、雪まみれになった男女が立っていた。 二人とも蒼白な顔で激しく震えている。 遭難しかけたというのは嘘ではなさそうだ。 「大丈夫ですか?早く中に入って下さい」 「ありがとうございます!」 二人は転がるように室内に入って来た。 尾形さんは値踏みするように二人を見据えている。 私は震えている二人を暖房の効いたリビングに連れて行き、急いで部屋から毛布を取って来て二人をそれでくるんだ。 「シチュー、食べられそうならどうぞ」 「すみません」 「ありがとうございます。助かります」 まだ温かいシチューを皿によそって二人に渡すと、二人はまだ震えている手で何とかスプーンを使ってシチューを食べ始めた。 「車で事故って…怪我とかは大丈夫なんですか?」 「ちょっとあちこち痛いけど、怪我らしい怪我はないみたいです」 「そりゃ運が良かったな」 尾形さんはまだ懐疑的な様子だ。 まあ、外に放り出さないだけましかもしれない。 「この辺りに泊まってるのか?」 「たぶん…この辺りにあるはずなんですが…」 男性のほうがスマホを操作して宿泊先のペンションのサイトを出して見せると、尾形さんはわかったと頷いた。 「そこなら場所はわかる。落ち着いたら車で送ってやるよ」 |