「そうだ。ボクがマッサージしてあげるよ」


男の子同士の友情についてしみじみ考えていると、不二くんが突然そんな事を言い出した。
言い出しただけじゃなく、腰を上げて私が座るベッドまでやって来た。


「えっ、え!?い、いいよっ!」

「疲れてるって言ってたじゃない」

「そ、そうだけど…」

「遠慮しないで。結構巧いよ、ボク」


相変わらずにこやかに微笑みながら不二くんが身を乗り出してくる。
私は彼の身体に押される形でベッドの上に仰向けになってしまった。


「恥ずかしい?」


私の上にいる不二くんがくすっと笑う。


「うつ伏せになってごらん。脚を揉んであげる」

「う…うん…」


仰向けで不二くんの綺麗な顔を見上げ続けるなんてとても心臓が耐えられそうにないので、私は素直に従った。


「緊張してるね。リラックス、リラックス」


歌うような優しい声が後ろから。
同時に、あたたかくて大きな手の平がふくらはぎを包み込むようにして揉み解しはじめる。

……ど……どうしよう……すごく、気持ちがいい……。

適当な所でもういいよと断るつもりだったのに、言い出せなくなってしまいそうだ。

不二くんの手が、私の脚をやんわりと揉む。
優しく擦り、撫でる。


「〜〜も、もういいよっ!もうすっかり疲れが取れたよ!ありがとう不二くん!」


もう無理だ。
頭から湯気が出そうになりながら起き上がる。


「そう?これからがイイところだったのに」


不二くんは何だか残念そうだ。
いやいや、私の気のせいだろう。
不二くんが好きなせいでおかしなフィルターがかかっているに違いない。


「不二くん、下に降りてみない?」

「そうだね。行こうか」


二人きりでいるからいけないんだ。
他の宿泊客がいる場所にいけば、きっと普通に楽しくお話出来るはずだ。

でもその前に早くこの頬の熱を冷まさないと。



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