少しの間、気を失っていたようだ。

気がつくと、色々なもので汚れていたはずの体は綺麗になっていた。
赤屍さんと愛しあった記憶がなければ、シャワーの後にそのまま眠ってしまったのだと勘違いしていたかもしれない。


「気が付きましたか?」


優しい声でそう言った赤屍さんもきちんと着替え終わっている。
いつもの紳士的でちょっと怖い赤屍さんだ。


「丁度良かった。夕食の準備が出来たそうです。先ほどオーナーが声をかけに来てくれました」

「えっ?」


言われてびっくりする。
時計を見ると、19時少し前。
随分長く愛しあっていた気がしたのに、実際には1時間も経っていなかったらしい。
すると、夕食という言葉に反応した現金なお腹が早速空腹を訴えはじめた。


「沢山運動しましたからね」


くすりと笑った赤屍さんが服を差し出してくれる。
私は赤くなりながらも手早く着替えた。


「では、行きましょうか」

「はーい」


ドアを開けた赤屍さんの腕に自分の腕を絡めて、ちらりと窓を見る。
外はさっきよりも酷くなっていた。殆ど吹雪に近い状態になっている。

階段を降りて食堂に向かう間、私と赤屍さんは楽しくお喋りをした。

これから恐ろしい殺人事件に遭遇する事になるとも知らずに……。

【終】


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