「さて…なまえさん」


紅茶を飲んで一息ついた赤屍さんが私を見る。


「疲れたでしょう。少しマッサージをして差し上げましょうか?」

「あ、それなら私が!」


私は挙手して逆にマッサージを買ってでた。
運転で疲れている赤屍さんを労ってあげたい気持ちもあったし、何より今不用意に触れられたら浴室でのスキンシップでくすぶっていた火が燃え上がってしまいそうだったからだ。


「赤屍さんこそ疲れてるでしょう?私がマッサージしてあげます!」


張り切ってそう言うと、私は彼の腕を引いてベッドに横になるよう促した。
ゲレンデでの事といい、旅先だからか自分でもかなり大胆になっていると思う。


「貴女がそう仰るなら」


赤屍さんは小さく笑うと素直にベッドに長身を横たえた。
うつぶせになった彼の体は綺麗に筋肉がついていて、すらりとしていて本当に惚れ惚れするような体躯をしている。

私はまず脚から始めることにした。
しっかりしたふくらはぎを両手で揉みこむ。
スキーで散々遊んだのに、あれくらいは運動に入らないのだろうかと思うほど、触れた筋肉はしなやかで、疲労を微塵も感じさせない。


「気持ちいいですか?」

「ええ、とても」


徐々に上方へ手を移動させていけば、笑みを含んだ答えが返ってくる。
こうして無防備な姿を晒す赤屍さんに跨ってマッサージしていると、何だか主導権を握っているようで嬉しい。

私はちょっとだけ悪戯をすることにした。
適度にお肉のついた魅力的なお尻を掌でゆっくりと撫で上げ、セクシーなウエストを両手で押しながら往復させる。


「クス……」


うつぶせのままの赤屍さんが含み笑いを漏らした。
どうやら彼もこの『悪戯』を楽しんでくれているようだ。

私は今度は、なだらかに伸びた背骨に沿って両手を滑らせた。
愛撫するように優しく肩甲骨を包み込み、何度も円を描くようにしては付け根を指圧する。
いつの間にか前屈みになっていたようで、私の胸が時々赤屍さんの背中に触れていた。
自然、誘惑するような形になるが、当然彼もその事に気が付いているはずだ。


「なまえさん」


不意に名前を呼ばれて、私は手を止めた。


「前もマッサージして頂いてよろしいでしょうか?」


艶めいたテノールを聞いた瞬間、体が熱くなる。
ごくりと喉を鳴らし、私はゆっくりと頷いた。



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