赤屍さんに一緒に入りませんかと誘う必要はなかった。
彼もまた私と同じ事を考えていたと分かったからだ。

脱衣所で二人してスキーウェアを脱ぎ、連れだって浴室に入る。
浴室は狭かったけど、何とか二人一緒に入ることが出来た。


「熱くありませんか?」

「平気ですよ、丁度いいです。あ、そこだめっ」

「ん?そことは?」

「あん、もう、だからダメですってば!」


シャワーヘッドから迸る熱いしぶきを体中に浴び、唇をついばみあい、じゃれあいながら互いの体を洗う。
赤屍さんの大きな掌が私の体にソープを滑らせると、私も彼の分身を両手で包んで泡だててあげた。


「クス…やはりお仕置きを楽しみにしていたのですね」


私の体の変化を直に感じたのだろう。
赤屍さんが笑った。
でも、まだここでは最後まではシない。
夕食の時間が迫っていたし、オーナーが紅茶を持って来てくれる事になっているのだから。


「この状態でお預けなんてかえって辛いです」

「だから“お仕置き”なのでしょう」


そう言って笑う赤屍さんは余裕の表情だ。
やっぱりお仕置きなんて希望するんじゃなかった。

丁寧すぎるほど丁寧に洗いあってから私達は浴室を出た。
いつもなら入浴後はバスローブに着替えて暫くまったりするのだが、ペンションではそうもいかない。
ひとまず部屋着に着替えることにした。



服を着てベッドに座ったところで、ちょうど紅茶が運ばれてきた。
トレイを持ってきてくれたのはアルバイトの女の人だ。
確か、みどりさんとかあおいさんとか、そんな感じの名前だった気がする。


「有難うございます」


紅茶を受け取った赤屍さんを見て、みどりさんだかあおいさんだかは動揺して顔を赤らめた。
見慣れているはずの私でさえ惚れ惚れするような美貌なのだから、当然といえば当然だ。
でもやっぱり恋人としては少し面白くない。

幸い、彼女は私が本格的にやきもきし始める前に部屋を出て行った。
繁忙期のペンションは忙しいから、こんなところでのんびりしている場合ではないのだろう。
お陰で私も醜い嫉妬を剥き出しにせずに済んだので良かった。



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