「着きましたよ、なまえさん」 赤屍さんの言葉にふと我に帰り視線を前に戻すと、いつの間にかペンションが目の前にあった。 車を駐車場に停め、寒さに身を縮めるようにして外に出る。 風はますます強くなっていて、容赦なく雪が吹き付けてくる。 「早く中に入りましょう」 赤屍さんが肩を抱いて引き寄せ、風から守ってくれた。 そのまま寄り添いあって玄関に向かう。 「やあ、お帰りなさい」 玄関の二重になっているドアを抜けると、オーナーが出迎えてくれた。 すぐ正面がフロントなのだ。 「雪が強くなってきていたので心配していたんですよ」 「ええ、随分天候が悪くなってきましたね」 「スキー場で気がついて直ぐに戻ってきたんです」 「正解ですよ。この調子だと今夜は吹雪になりそうだ。ヘタすると明日も天候が回復しないままかもしれません」 オーナーの人柄の良さが表れた顔立ちにちらりと不安そうな色が浮かぶ。 しかし、直ぐに気を取り直してオーナーは笑顔を浮かべた。 「寒かったでしょう、暖かい飲み物を用意しましょうか?」 私の様子を見て気を遣ってくれたようだ。 でも、今はそれよりも熱いシャワーが浴びたかった。 「えっと、先にシャワーを使いたいので、三十分くらいしたら部屋に届けて貰えますか?」 「いいですよ。じゃあ、後でお持ちしますね」 そう約束を取り付け、私と赤屍さんは部屋へ向かった。 |