「あれ……?」


ふと光が陰った気がして上を見上げると、さっきまで晴れていたはずの空はどんよりと薄暗くなっていた。
気のせいか風も強くなってきたようだ。
この分だと、吹雪になるかもしれない。

気にせず滑るべきか、それともそろそろ戻ろうと提案するべきか少し迷ったが、その前に同じく空を見上げていた赤屍さんが口を開いた。


「この雲行きでは今夜は吹雪になるかもしれませんね」

「そうですね」

「今日はもうペンションに戻りましょう。滑り足りなければ、また明日滑ればいい」

「はい!」


本格的に天候が崩れる前にと、私達はスキー場を後にした。

宿泊しているペンションまでは、車で20分ほど。
信号など殆どない道でのことだから、結構距離がある。

暫く車を走らせていると、案の定天候は崩れ始めた。
あのまま滑り続けていたとしても直ぐに切り上げるハメになっていただろう。
そうなったら帰り道でも大変な思いをしていたはずだ。
視界の悪い道を運転していて、もし事故を起こしてしまったら、徒歩でこの道を彷徨うことになり、最悪の場合遭難してしまっていたかもしれない。

私はハンドルを握る赤屍さんの横顔を尊敬の眼差しで見つめた。
的確な状況判断の出来る男の人はカッコいい。




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