ぺろぺろ キューン… 慣れ親しんだ鳴き声と、唇に当たる柔らかい感触。 なまえ姫はゆっくりと瞳を開いた。 「…なまえ姫…」 心配そうに覗き込んでいるのは、姫の愛犬。 どう見ても、犬耳尻尾の生えた体長186pの成人男性だが、彼はれっきとした飼い犬だ。 「くーちゃん…」 「はい」 名前を呼ぶと、嬉しそうに豊かな黒い尻尾をぱたぱたさせる。 「お目覚めになって良かった」と抱き起こしながら、姫の愛犬は主の白い首筋に端正な顔を埋めた。 艶やかな漆黒の黒髪が視界に広がり、冷たい唇が首筋に押し付けられてくすぐったい。 「…くーちゃん、魔女の使いのドラゴンや魔物は?」 「コマギレにしました」 殺戮癖のある姫の愛犬はとんでもなく強かった。 メスと剣で魔物を屠り、主人の元に駆け付けたのだ。 「魔女は?」 「コマギレにしました」 なまえは犬をいい子いい子してやった。 褒められて、キューンと嬉しそうに鳴き、姫に口付けるわんこ。 「愛しています、なまえ姫……」 「私もよ、くーちゃん…」 抱き合う、姫と愛犬。 ちなみに、城内には、魔女の配下の魔物と一緒に、姫を救いにやってきた各国の王子や勇者達までバラバラになって転がっていた…… |