今夜は城で舞踏会が開かれることになっていた。
この国の王子様のお妃選びも兼ねているということで、年頃の少女達がいる家は舞踏会の支度で大忙しだ。

しかし、ここ沢田家では、母親である奈々はさておき、姉貴分ビアンキの猛反対によりなまえはお留守番が決定していた。

「危ないからなまえはお留守番してなさい」

なまえの双子の弟である綱吉には、ビアンキが反対する気持ちがよくわかる。
何しろ並盛の王子は群れを見れば容赦なくトンファーで滅多打ちにする凶暴な男なのだ。
なまえに万が一の事があってはいけない。

「何かお土産持って帰るよ。直ぐに帰ってくるからさ」

「うん」

素直にこっくり頷いた姉に安堵して、綱吉は母達をエスコートする為に城へ出掛けていった。




その10分後。

「おい、なまえ。舞踏会に行くぞ」

突然戻ってくるなり、家庭教師のリボーンがなまえにそう告げた。

「え?どうして?」

帰って来たらすぐに寝られるように皆の分の布団を敷いて就寝準備をしていたなまえは、きょとんとした顔で彼を見返した。

「行きたいんだろ。俺が連れて行ってやる」

「ううん、大丈夫。私ちゃんとお留守番してるから平気だよ」

「パジャマじゃ城に入れねえな。このドレスに着替えろ」

「あの、リボーン、」

「馬車は下に用意してある。急げ」

「…………うん」

なまえは善良で優しい性格の少女だったが、いかんせん押しに弱かった。
優柔不断というわけではなく押しの強い男に弱いのだ。

こうしていけにえの兎は凶暴な肉食獣達が待ち構える狩場に連れ出されたのだった。



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