「んーっ、これはなかなか」

模擬披露宴の試食会で、料理を一口食べた観月は感嘆の声を漏らした。

「この式場には腕の良いシェフがいるようですね。披露宴のコース料理では正直ガッカリさせられることも多いですが、これなら期待出来そうだ」

「はい、とっても美味しいです!」

クルミのチョコレートケーキを堪能しながら、なまえは嬉しそうに同意した。
そして、ふと思いついたような顔になり、観月の袖をつんつんと引いた。

「はじめさん、はじめさん」

「何です?」

「このお料理、披露宴のときお嫁さんも食べられるんですよね?お嫁さんだけお預けとかないですよね?」

「心配しなくても大丈夫ですよ。このボクがキミの楽しみを奪うような披露宴にするわけがないでしょう?」

「はじめさん…」

「ただ、本番ではキミはドレスを着ているわけですから、お腹いっぱい食べるというわけにはいかないでしょうね。ドレスのお腹がぷっくり膨らんでもいいのですか?」

「だ、だめです、恥ずかしいですっ」

つい勢いこんで言うと、隣のテーブルに座っていたカップルにくすくす笑われてしまった。
食い意地がはっていると思われたのだろうか。
なまえは恥ずかしくなってうつむいた。
否定しきれないのが辛いところだが、ここの料理が美味しいのが悪いのだ。

「量はセーブしなければいけませんが、僕がちゃんと計算して全部食べられるようにしてあげますから」

「はじめさん…!」

なまえは改めて観月と結婚出来る自分は幸せ者だと思った。
こんな愛情と思いやりに溢れた人と結婚出来るのだから。



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