披露宴での食事会の演出のひとつに、最近はオープンキッチンが使われることが増えてきているそうだ。
シェフが招待客の前で調理するのはもちろんのこと、花嫁や花婿がちょっとしたものをその場で調理して招待客に振る舞うというのもあるらしい。
手料理を振る舞うと言っても、よほど料理に自信がある人でなければ、招待客側としては正直微妙なんじゃないだろうか、となまえは思った。

「ねぇ、なまえちゃん」

「激辛料理はダメだからね、周助」

「どうして?ちゃんと練習するから大丈夫だよ」

「いや、それ以前の問題だから」

なまえはきっぱりばっさり斬って捨てたが、不二はまだ諦めきれていないようだ。
頑固なのはお互い様だし、そういうところも含めて相手を受け入れる覚悟があるからこそ結婚を決めたのだが、こればかりは絶対に譲れない。

「だって、大和先輩も来てくれるんだよ!中学の時、春の感謝祭で大和先輩に激辛料理食べさせて気絶させたの忘れたの!?また気絶させたらシャレにならないよ!」

「あの時はちょっと分量を間違えちゃって…でも、今度は大丈夫だよ」

「いやいやいや…私には招待客を守るという使命があるから譲れない!」

「なまえちゃん…」

「だーめ。そんなに作りたいなら結婚したら私が食べてあげるから…」

「クスッ、約束だよ」

鼻歌でも歌い出しそうなくらい上機嫌になった不二を見て、鉄の胃袋が欲しい、となまえは切実に思った。



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