「てめぇ…何しに来やがった」

こめかみに怒りマークを浮かべたザンザスが部屋に入ってきた時には、既にリボーンの用事は済んだ後だった。

「うるせーぞロリコン」

ザンザスの怒りに火を注ぐどころか、リボーンはナパーム弾を撃ち込んだ。

「かっ消す!!!」

「やってみろ。受けてたつぞ」

「かっ消さないの!受けてたつのもダメ!!」

互いに愛銃を構えた男達をなまえは必死に止めた。
この二人がやりあったら部屋が吹っ飛んでしまう。

リボーンはなまえに「完成したら渡しに来るからな」と言い置いて帰っていった。
嵐を巻き起こして颯爽と立ち去った家庭教師に、なまえは相変わらずだなぁと思う。

「ドカスが…」

どかっと椅子に座り、殆ど寝そべるような体勢でグラスを傾けるザンザスに、なまえはちょっと笑ってしまった。

「誰にでもそんな感じに怒ってみせるけど、実は結構冷静に観察してて、その人の良い所も悪い所もちゃんと評価してるんだよね」

「何故そう思う」

「なんとなく」

「それも超直感か」

ザンザスは忌々しげに舌打ちした。

「勘違いするな。沢田綱吉も家光もリボーンもドカスであることに変わりはねえ。奴らはいずれかっ消す。──が、お前と、お前が作るメシは悪くねえ」

「私も、ザンザスのこと大好き」

ザンザスはフンと鼻を鳴らした。
興味が失せたといった風に赤い瞳がなまえから外れ、またグラスを傾けはじめる。
一見ほっぽり出された感じだが、なまえはそれが照れ隠しなのだとちゃんとわかっていた。
ツンデレみたいなものだとなまえは思っている。
名付けるなら“俺様デレ”だ。

よいしょ、とザンザスの膝の上によじのぼり、大きな身体に自分の身体を預ければ、猫にするみたいに大きな手で頭や背を撫でられる。
俺様だし暴君だけど、この人はとっても優しくて可愛い人なのだと言ったら、あの家庭教師はどんな顔をするだろうか。
たぶん、口元を歪めてニヒルに笑い、ザンザスが聞いたら激怒するような事を言ってからかうのだろう。
彼ははよく似ている。

「ひねくれてるところなんか特にそっくりなのにね」

「…誰がだ」

「誰かなぁ」

逞しい胸板に頬を寄せたまま、なまえはうふふと忍び笑った。

もうすぐ、この人と夫婦になる。
それはなんて幸せなことなんだろう。



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