骸にプロポーズされてから、どうしても行きたかった場所になまえは彼と二人で訪れていた。
結婚式場が開催しているブライダルフェアだ。

「ドレスの試着の予約、とれましたよ」

「うん、ありがとう。こっちも料理試食会の予約入れてきたよ」

何しろ大勢の見学者で混雑していたため、二人は手分けして目的のコースを手配することにしたのである。
ようやく合流出来た事にほっとして、骸の腕に腕を絡める。

「試着は１４時からです」

「料理試食会は１１時からだって」

「ではまだ少し時間がありますね。先にチャペルを見学していきましょうか」

「賛成！」

なまえと骸は館内に二つあるというチャペルの一つを訪れた。
ステンドグラスが美しい、神聖な雰囲気の場所だ。

「骸とこうして教会に来られるなんて思わなかった」

「確かに僕には似つかわしくない場所だ」

「ううん、そんなことないよ」

そうじゃなくて、となまえは首を振る。

「まだ夢を見てるみたい。本当に、私、骸のお嫁さんになるんだね」

「そうですよ。今更逃がしはしません」

「逃げないよ」

笑った拍子に、ステンドグラスを透かして入ってきた陽光を受け、なまえの左手の薬指にはめられたリングがきらりと輝いた。
骸から正式なプロポーズを受けた際に貰ったものだ。
お揃いのデザインのリングが骸の薬指にもはまっている。

「絶対に離さないでね」

「嫌だと言っても、何処にも行かせませんよ。君は僕のものだ」

「うん」

骸が顔を傾けて軽く口付ける。

それは図らずもこの場所で近い内に行われるであろう誓いのキスの予行演習となった。