ドレスの試着はやはり人気があるらしく、予約が殺到していた。 受付が遅くなった人は夕方まで待つことになるというから、三時間後で済んだのはまだ早いほうだろう。 「先にチャペルを見に行こうか」 「うん」 赤司と手を繋いでなまえは建物の外に出た。 外はまるでお城か宮殿の庭園のような景色が広がっていた。 「奥に見える建物はゲストハウスウェディング用のものだね」 ゲストハウスのコの字型の披露宴会場の内側部分にはパティオと呼ばれる中庭があり、招待客が自由に行き来出来るようになっている。 そこにデザートビュッフェのテーブルを用意すれば、ガーデンウェディングの気分も味わえるというわけだ。 「招待客が多いから場所に悩むね。殆どが征くんのお父さんの繋がりの偉い人だから、失礼があってもいけないし」 「そう悩む事はないよ。お前の希望を最優先させるから心配しなくていい。これは俺達の結婚式なんだから」 「うん…」 二人は木陰に配された白いガーデンテーブルセットの一つに陣取って、受付から借りて来たカタログを広げた。 すぐ近くには薔薇の花壇があり、通路には蔓薔薇を絡ませたアーチ、緑の生け垣をバックに純白のマリア像が佇んでいる。 ミニ薔薇園といった風情だ。 卒業アルバムの倍くらいの厚さがあるカタログを持ち運ぶのは大変そうだと思ったが、赤司はまるで重さなど感じていないように片手で持って歩いていた。 腕力とか握力が一般人とは違うのだ。 昨夜も、ちょっとふざけて抵抗するふりをしたら、軽々と抱っこされてベッドに運ばれてしまった。 そして、お仕置きだとばかりに、いつもよりちょっと意地悪なやり方であんあん鳴かされた。 「式はともかく、なまえのドレス姿が楽しみだな」 「う、プレッシャーが…」 「大丈夫。お前は誰よりも可愛いよ。もっと自信を持っていい」 「征くん…」 近くには誰もいない。 つん、と赤司の袖を指で摘まんで引いておねだりすると、小さく笑って唇が降りてきた。 今までもそうだけど、これからは遠慮なく甘えられるのだ。 それと同じくらい甘やかしてあげたいと思った。 「一緒に幸せになろうね」 「ああ。俺がそう決めたんだから絶対だ」 |