いよいよ待ちに待ったウェディングドレスの試着をする時がきた。
赤屍には待ち合い室で待っていて貰い、なまえは係員に案内されて試着室の中に入っていった。

数あるドレスの中から悩んだ末に選びとったものは、プリンセスラインのウェディングドレス。
プリンセスラインとは、ドレスの下にパニエを履くことで大きくボリュームを出した華やかなデザインのことだ。
上半身がすっきりと細く見え、小顔効果も期待出来る優れものである。

ティアラも貸し出して貰えるということで、髪に飾ってから、待ち合い室と試着室を隔てているカーテンを開く。
ウェディングシューズのヒールが少し高めなので、ふらつかないように気をつけるので精一杯だ。

「これは…」

椅子に座って待っていた赤屍が立ち上がった。

「驚きました。綺麗ですよ、とても。想像以上だ」

「そんな…」

「実に美しい」

顔が赤くなっているのがわかる。
ちょっと大袈裟に褒め過ぎではないだろうか。

「こんなに美しい人を花嫁に出来て幸せですよ」

「蔵人さん…」

「本当にお似合いですよ」

スタッフも赤屍に唱和して褒めてくれる。
こちらは社交辞令が多分に入っていそうだが、今のなまえはそんなことも気にならないくらい嬉しかった。

赤屍と二人、見つめあう。

「今回はオーソドックスなティアラをおつけしましたけど、デザインも色々ございます。イヤリングもありますよ。これに更にシルクのグローブをはめてブーケをお持ちになれば花嫁様の完成です」

スタッフの言葉に、なるほどと赤屍が頷く。

「ドレスだけでなくアイテムも種類があるのですね」

「はい、是非ご覧になって下さい」

それからは品物を次々と出してくるスタッフの営業トークが始まったため、甘い空気は薄まったが、確実に二人の気持ちは結婚式に向けて強くなっていた。

「蔵人さんもタキシードを着てくれたら素敵だったのに」

「それは本番で、貴女と並び立つ時の楽しみにとっておきましょう」

「はい！」

スタッフはまだ営業トークを続けていたが、その間も赤屍の手はなまえの手を握ったまま離さなかった。