雲雀恭弥は群れが嫌いだ。
だから、このブライダルフェアに引っ張って来るのもかなり骨が折れた。

「君の好きに決めていいよ」と言ってくれたがのは嬉しいが、丸投げは困る。
やっぱり相談して決めたい部分もあるし、大体の流れを把握して欲しかったというのもある。

「恭弥さん、お父さんの関係の人とかは本当に呼ばなくていいんですか」

「父は父だ。僕には何も関係ないよ」

ということらしい。
政財界の黒幕の落とし胤ではないかとまで噂されている人物だが、偉い人達を招待しなくて済むと分かって多少気持ちが楽になった。

「じゃあ、やっぱりゲストハウスウェディングがいいかなぁ。ツナ達を呼んで…いつものメンバーなら別にいいですよね?」

「苛々してきたら咬み殺していいならね」

「わかりました」

その時は、まあ、何とかなる。たぶん。

「あっ、これ可愛い!」

「何?」

面倒そうについてきていた雲雀は、なまえの言葉に、彼女が指差したものを見た。
それは彼のお気に入りの小鳥そっくりな黄色い鳥の形をしたマグカップだった。
雲雀の肩にちょんと乗っていたヒバードが首を傾げる。

どうやらここでは専任の講師を設けて決められた講習を受けることで、ウェルカムボードやゲストカードなどのアイテムや、ブーケまで手作り出来るようだ。
白いふわふわの羽がついたゲストカードや、オーガンジーのミニ巾着にヒマワリの種を入れたギフトなど、様々な物が展示されていた。

「引出物は別に決めるとして、ゲストカードをヒバードの形にしたら可愛くていいと思うんですけどダメですか?」

「構わないよ」

即答だった。
この人はこれで小さい可愛い生き物には甘いのだ。

「じゃあ早速資料貰ってきます。あ、講習は恭弥さんも行きますか?」

「仕方ないね。付き合ってあげるよ」

小鳥が雲雀の肩から飛び立つ。
ヒバードは大きく旋回しながら、歓声をあげる代わりに愛らしい声でさえずって、喜びの歌をうたった。


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