その電話がかかって来たのは土曜日の19時過ぎのことだった。
実は数日前にコナンくんからいよいよ組織との決着がつきそうだと聞かされていたので、そわそわして仕事中に集中出来ずにいたのだ。
電話がかかってきた時はテレビを見ていたのだが、まるで内容が頭に入って来なかったから、待っていましたとばかりにスマホに飛び付いたのだった。

『ようやく全部終わったよ。首謀者も捕らえたし、組織は壊滅した』

私にそう告げたコナンくんの声はどこまでも冷静だった。
だからこそ、何かあったのだとすぐにわかった。

『ただ、最後にアジトが爆発した時に安室さ……降谷さんが巻き込まれて──もしもし、なまえさん、聞こえてる?』



完全に時間外だったのに、当直の公安の人が風見さんだったお陰で病室までスムーズに行けたのは幸運だった。
案内された個室のベッドの中で、身体中あちこちに包帯を巻かれた零さんは上半身を起こして座っていて、スマホで何やら部下の人に指示を出している最中だった。
私を見て気まずそうに電話を切った零さんに歩み寄る。

「大怪我したって聞きました。一歩間違えていたら死ぬところだったって」

「コナンくんかい?はは、随分大袈裟に伝えたんだね」

「実際、包帯だらけじゃないですか」

「君が思っているほど酷くはないさ」

「心配しました」

「それは…………ごめん」

零さんの膝に顔を伏せてわっと泣き出した私を、零さんは優しく宥めてくれた。
違う。こんなことがしたかったんじゃない。

「心配をかけて悪かった。でも、僕は大丈夫だよ。こう見えて悪運は強いんだ」

零さんの優しい声を聞いていると涙が止まらない。この人を失うところだったかもしれないと思うと寒気がした。

「退院出来るまで毎日お見舞いに来ます」

「ありがとう、嬉しいよ」

「何か欲しいものとかありませんか?」

「そうだな。一つだけ欲しいものがあるんだが」

「何でも言って下さい」

優しい手つきで私の涙を拭いながら零さんが微笑む。

「君が欲しい」

閉まっているドアの外側からガタッという音がして、それから、小さく「すみません」と謝る風見さんの声が聞こえてきた。

「君の人生を僕に預けてくれないか。結婚しよう」

「零さん……」

零さんの綺麗なスカイブルーの瞳は私だけを見つめていた。
蠱惑的なラインを描く唇が開いて言葉を紡ぎ出す。

「返事は?」



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