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「ドラゴンエンパイア祭りに行ったァ!?」

綺麗な顔に青筋をたててアサカが叫ぶ。
対するレンはにこにこと笑顔だ。
彼を止められずに祭りに同行したばかりか、あまつさえたこ焼きをあーんしあったりしてイチャイチャしてしまったなまえは、困りきった様子で二人のやり取りを見守っていた。

「楽しかったですよ。テツとアサカもくれば良かったのに」

「いや、さすがにそれは…」

口を濁したテツに代わり、アサカが食ってかかる。

「ご自分の立場を自覚なさって下さいレン様!そんなに大勢の人間が集まるヴァンガードのイベントに行くなんて……もしバレていたら大騒ぎになるところだったんですよ!」

「いいじゃないですかー、アサカの怒りんぼ」

拗ねた口調で言っていたレンがふと遠くを見るような眼差しを窓の外へ向けた。

「見てみたかったんですよ。新しい時代の担い手である子供達を」

「レン様…」

「それに、言ってみれば下見みたいなものです。僕となまえの子供もそのうち加わることになるんだから」

「えっ」

思わずなまえが声をあげる。
レンは、ふっと笑ってなまえを振り返った。
彼女の手を取り、自らの口元へと持っていく。

「僕と結婚して下さい」

流れるような優雅な仕草で左手の薬指の上に軽くキスをして微笑んだ。

「独占したいのも、ずっと一緒にいたいと思うのも、君だけだ」

「レ、レン様…!」

「ほらほら、結婚するんだからもう様付けはいりませんよ。レ ンです。呼んでごらん」

「むむ無理です!それにまだ結婚するって決まったわけじゃ…」

「えっ、僕をフるんですか?ひどいなあ。傷心のあまり仕事サボっちゃいますよ」

それはいつものことじゃないか、とテツとアサカは思ったが、賢明にも黙っていた。

「なまえが結婚してくれないなら、僕は一生独身のままですね。そして寂しく死んでいくんだ。可哀想だと思いませんか?」

「そ、それは…」

「ね、だから結婚しましょう」

なまえの手を握ったまま離さず、グイグイ迫ってくるレンに、なまえは思わず頷いてしまった。

「やった!見ましたよね?テツとアサカが証人ですよ」

握った手を引き寄せられて抱きしめられる。
レンの胸は固くて温かく、良い香りがした。

「愛してる。君だけを」

「レン様…」

「気づかないふりなんてずるいですよ。僕はずっと君に夢中なのに」

「そ、そういうわけじゃ…」

「でも、もう捕まえた。何があってももう離しませんよ。覚悟して下さいね」

顔をあげさせられる。
レンの美しい顔が迫ってくるのを見て慌てたが、いつの間にかテツとアサカはいなくなっていた。
さすが長年に渡ってレンの面倒を見てきただけあって二人のエアリーディング能力は半端ない。

キスの雨を降らされながら、なまえは大変な人に捕まってしまったと内心嬉しいやら怖いやらだった。

「なまえ、口を開けて」

「レ、レン様…」

「レン、です。ちゃんと呼んでくれないと、キスをやめてあげませんよ」

それもいいかなと一瞬思ってしまった自分は相当この男の甘い毒におかされている。
自覚はあるが、もう逃げられそうもなかった。


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