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どんなチョコレートにするか、最初から決めていた。
これしかないという確固たるイメージがあったので悩む必要はなかったのだ。
ただ、それを実際に形にするのが一苦労だった。

だから、手渡した箱を有り難うと受け取ったダイゴがそれを開けて中身を目にし、驚きを露にした瞬間は本当に嬉しかった。
やったね!という感じだ。

「すごいな……これを全部君が作ったのかい?」

驚きの表情のままチョコレートを手にしたダイゴが感心したように言った。

「炎の石、水の石、リーフの石、雷の石、太陽の石に月の石、光の石と闇の石、目覚め石まである」

箱の中に綺麗に並べられているのは、“石”に似せたチョコレート。
どれも一口サイズだがリアリティにこだわっただけあり本物そっくりに見える。
それこそ石マニアのダイゴが感心するくらいに。

「有り難う。本当に嬉しいよ」

瞳を輝かせたダイゴがなまえに微笑む。
その笑顔が本当に嬉しそうなものだったので、頑張った甲斐があったと思った。

「なんだか食べるのが勿体無い気もするけど…早速ひとつ頂いてもいいかな?」

「もちろんです。どうぞ」

嬉しそうなダイゴにつられてこちらもにこにこしてしまう。

「ん。美味しいよ。味もバッチリだね」

「良かった、喜んでもらえて」

「君からチョコをもらって喜ばないはずがないよ」

「ダイゴさん…」

「本当に嬉しいし、美味しい。僕の言葉が信じられない?」

「そんなことないです!」

「うん、じゃあ君にもお裾分けしてあげよう」

ダイゴの手がなまえを腰を抱き寄せ、もう片方の手で顔を上向かせられる。
顎をつまんで引かれると自然に口が開き、合わさった唇からあたたかい舌とともにチョコレートのねっとりした甘さが伝わってきた。

「僕からもプレゼントがあるんだ」

悪戯っぽい声音に、閉じていた目を開くと、いつの間にかダイゴが薔薇の花束を持っていた。
傍にはメタグロスが浮かんでいる。
予めポケモンに持たせていたのだろう。
やられた。

「ディナーをご一緒にいかがですか?お嬢さん」

「喜んで!」

なまえが抱きつくとダイゴは笑って抱きしめてくれた。

「世界で一番素敵なバレンタインだよ。有り難う、なまえちゃん」

「私のほうこそ…有り難うございます。大好きです、ダイゴさん」

「愛してる」

再び重なる唇。
くっついては離れて、またくっついて。
二人して笑い声をもらす。
甘いバレンタインの夜はまだ始まったばかりだった。


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