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ポケモンに与える食べ物にポフレというものがある。
見た目はカップケーキやマカロンに似ていて、味はスイート、スパイシー、フレッシュ、サワー、ビターの5種類あり、熟練度によって普通のものから、レア、リッチ、プチデコ、フルデコとグレードが上がっていく。

そのポフレをダイゴのポケモンにあげていると、後ろから抱きしめられた。
ゆるく回された腕は、しかし、逃げることを許さないというように腹の辺りで手を組み合わされていて、簡単には振りほどけそうにない。

「みんな君にすっかり懐いてしまったね」

それはそうだろう。
毎日のようにご飯をあげたり、撫でてスキンシップをはかっていれば、自然と懐くものだ。
まるで懐いたらいけないみたいな言い方だが、何が不服なのだろうと顔を振り向かせれば、待ち構えていたように口付けが降ってくる。

「僕のなまえちゃんなのに」

思わず吹き出しそうになった。

「見てごらんよ、メタグロスなんて君に擦り寄ってきて離れようとしない」

「ダイゴさん、ポケモンにやきもち妬いてるんですか?」

「僕のなまえちゃんなのに」

同じ言葉を繰り返して、ぎゅうと抱きしめてくるダイゴに、なまえはくすくす笑ってその手に自分の手を重ね合わせた。

「そうですよ、私はダイゴさんのです」

「本当に?ちゃんとわかって言ってるかい?」

「もちろんです」

「それならいいんだ」

ようやく抱擁は解かれたものの、ダイゴの片腕はなまえの腰を抱いたままだった。
今度は正面からキス。
額を合わせ、ダイゴは満足げな息をついた。

「今とても幸せだよ。こんな生活、想像したこともなかった」

「私も幸せです」

「本当の本当に?」

「本当の本当に」

ダイゴはなまえの瞳をじっと見つめた後、柔らかく微笑んだ。

「本当にここでの生活に不満はないんだね」

なまえは頷いた。
十分満足している。
衣食住に何ら不満はない。

「何か必要なものがあったら何でも言ってくれていいんだよ」

「はい、有り難うございます」

ダイゴはもう一度なまえを抱きしめてから、名残惜しそうにその身体を離した。
ポケモン達をモンスターボールに戻して装着する。

「それじゃあ、行って来るよ」

「はい」

「僕が帰るまで家から出ないこと。誰か訪ねてきても出ちゃ駄目だよ」

「はい」

いつものやり取りを繰り返して、満足したのか、ダイゴは最後に行ってきますのキスをして家を出て行った。
しっかりと外から鍵を閉めて。

残されたなまえは本棚から取り出した本を読むことにした。
夕食の支度までの間、のんびり読書をして過ごすのが習慣になりつつある。

陽当たりの良い場所に置かれたロッキングチェアに座り、本を広げたなまえは自然と大好きな歌を口ずさんでいた。

ダイゴはなまえをここに閉じ込めていると思っているようだが、なまえは自ら望んでそうしているのだ。

鳥籠の中の鳥が幸せでないと誰が決めたのだろう。

今日も閉じられた籠の中で愛する人の帰りを待つなまえは満ち足りていて幸せだった。


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