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「君は突然空中に現れたんだ」

ダイゴはなまえにそう説明してくれた。
突然空間が歪み、何もない空中に現れたのだと。
とてもすぐには信じられない話である。

「驚いてるね」

「それは…もちろんですよ…まさかこんなことが起こるなんて…」

なまえはこれまでの自分の事を彼に説明した。
それでわかったのだが、どうやらここはなまえがいたのとは別の世界のようだった。
あの洞窟で私を助けてくれたロボットのようなものは、ポケットモンスター、略してポケモンと呼ばれる生き物であるらしい。
自分達の住みかを荒らされたと勘違いしたあの洞窟に住み着いていたコウモリポケモンに襲われそうになったところを助けられたというのが真相だ。
このトクサネという場所にあるダイゴの自宅に連れて来て貰う時も、エアームドというポケモンに乗せて貰った。

「あの洞窟は古代遺跡の一つでね。今までにも不思議な現象が目撃されている。何らかの力が働いて君のいた世界と繋がったのだろうと僕は考えている」

「じゃあ、あの洞窟から元の世界に戻れるんでしょうか?」

「それはどうだろう。繋がったのはほんの僅かな時間だけだったし、次元の裂け目は直ぐに閉じてしまったから、今すぐにというわけにはいかないんじゃないかな」

「そんな…」

「心配するなという方が無理だろうけど、少なくともここにいる間は僕が責任を持ってなまえちゃんの面倒を見るから安心していいよ」

ダイゴは安心させるようになまえの手をとって自分の両手で包み込んだ。
大きなあたたかい手だ。

「そうしてもらえると正直助かります。でも、どうしてそこまでしてくれるんですか?」

「僕はね、君を見つけた時にドキドキしたんだ。何かとても凄いことが始まったんだって。だから君と関われることが嬉しいんだ」

「ダイゴさん…」

じわりと瞳に涙が浮かぶ。
正直なところ不安で仕方なかったからダイゴの申し出はとても有りがたかった。

「だから何も心配はいらないよ。この家を自分の家だと思って寛いでくれていい」

「あの、じゃあせめて家事は任せて下さい」

「それは助かるな。この家は普段僕しかいないから」

「えっそうなんですか?」

「ああ、男の一人暮らしで気ままなものさ。石を探したり仕事に出たりで今までは殆ど帰っていなかったけれど、これからはなまえちゃんが待っていてくれるからね」

帰って来た時に待っていてくれる人がいるというのはいいものだね、と笑うダイゴになまえの胸はざわめいた。

この家でダイゴと二人きり?

不安はなくなったけれど、また新たな問題に直面した瞬間だった。


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