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今年のクリスマスは平日。当然仕事だ。

今日も一日朝から晩まで働いてくたくたになった身体で帰り道を急ぐ。

それにしても疲れた。
少しでも気を抜けば足がもつれて転んでしまいそうだ。
と思っていたら、足下ばかり気にしていたせいで注意がおろそかになっていたらしく、すぐ近くまでトラックが迫ってきていたことに気づくのが遅れた。

目の前に広がるヘッドライトの光。

覚悟して目をつぶったが、衝撃は来なかった。
その代わりに奇妙な浮游感が身体を包む。

「……えっ……」

目を開けると、さっきまでとは全く違う場所にいた。
どうやら薄暗い洞窟の中のようだ。
どうしてこんな所に?
トラックは?
とキョロキョロ見回してギョッとした。
身体が宙に浮いている。

「えっ、嘘!?なにこれ!?」

「動いちゃ駄目だ!」

あたふたしていると、下から飛んできた声に思わず動きがとまる。
だが、遅かった。
周囲の薄闇の中に無数の光がギラリと光ったかと思うと、何か飛ぶものが四方八方から一斉に襲いかかってきたのだ。

「メタグロス!いわなだれ!」

凛とした声が響く。

大きな破壊音が立て続けに起こり、こちらに向かって飛んできていた何かが奇声をあげながら次々と落下していった。
見れば、4本のアームを持つ丸いロボットのようなものがなまえのすぐ近くに守るように浮かんでいる。
このロボットが何か攻撃をして追い払ってくれたようだ。

ほっとしたのも束の間、突然身体を包んでいた浮游感がふっと消えた。
不思議な支えを失った身体は当然重力に従って落ちていく。

「きゃああっ!」

落ちる!
だが、想像していたような衝撃はなく、どさっと音をたててなまえの身体は受け止められた。

「大丈夫かい?」

さっきの声の男性だった。
彼が受け止めてくれたのだ。
お姫様抱っこをされている状態だ。

「ありがとうございます…」

「いや、礼には及ばないよ。でも間に合って良かった」

高級そうなスーツに身を包んだ銀髪の見目麗しい男性はにっこり微笑んだ。

「僕はダイゴ。ここには石を探しに来ていたんだ。君の名前は?」

「私は…」

なまえが名乗ろうとした時、さっきのロボットが寄って来た。
ダイゴと名乗った男性に何かを伝え、ダイゴが頷く。

「そうだね。先にここを出よう」

ダイゴに抱えられたままであることに気づき、なまえは慌てて降りようとしたが、

「この洞窟の中は足場が悪いから」

と降ろして貰えなかった。

自分が違う世界にやって来てしまったのだとなまえが知るのは、もう少し先のことだった。
──ポケットモンスターの世界に。


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