渋谷荘に遊びに来て夕食をご馳走になった後、私は遊騎くんと一緒にテレビの前に座っていた。 みんなは順番にお風呂に入っている。 いまテレビに映っているのは、青い猫型ロボットが活躍する子供向けのアニメだ。 遊騎くんは先程からずっと、じぃっとテレビ画面に見入っている。 彼は『にゃんまる』シリーズが好きらしいから、同じ猫系キャラと言うことでこの猫型ロボットにも興味があるのかもしれない。 「ねえ遊騎くん、このジャイアンの中の人の声、平家先輩に似てない?」 「平家(にばん)と一緒にしたらガキ大将が可哀想や」 …どうしよう。今ちょっと「確かに」と思ってしまった。 平家先輩が近くにいなくて良かった。 「俺、この女嫌いやし」 相変わらず画面を見つめたまま、遊騎くんが妙にきっぱりした口調で言い切った。 画面の中では、このアニメのヒロインの女の子がお金持ちの男の子に誘われて自宅に遊びに行っていたのだが、いつものように主人公が猫型ロボットに泣きついて便利な道具を出して貰うや、そっちのほうが楽しそうだと主人公と一緒に遊びはじめた所だった。 確かに、同性の私から見てもちょっとなぁ…と疑問に思わずにいられない変わり身の早さだ。 こうしてある程度成長してから見返してみると、子供の頃には解らなかった面が見えてくる。 「にゃんまるなら絶対仲間外れになんてせぇへん」 「桜ちゃん?うん、そうだね。桜ちゃんならきっといじめっ子達を叱って『皆で仲良く遊ぶのだ!』って言うもんね」 私は納得して頷いた。 うん、桜ちゃんはすごく良い子だ。 「遊騎君、お風呂空きましたよ」 友達の器の大きさをしみじみと再確認していると、平家先輩が入って来た。 お風呂上がり…なんだろうか? 先輩はいつもの制服の上に浴衣を着ていた。 これがパジャマがわりの就寝スタイルならやっぱり湯上がりなんだろう。 ふかふかの白髪が確かにほっこりしているような気もする。 「今度は私が彼女の相手をしますから」 「んー…これもうちょいで終わるねん」 嫌そうな顔で遊騎くんが振り返ったのにつられて先輩のほうを見た私はギョッとした。 先輩が何処からか取り出した『縛られて』というタイトルの官能小説を片手で広げていたからだ。 書店でレジに持って行くのさえ恥ずかしくなりそうなモロにアレな表紙が目に飛び込んでくる。 「ゆ、遊騎くん見ちゃだめっ…!」 私はとっさに両手で遊騎くんの目を目隠しして卑猥な本の表紙が見えないようにした。 自分でも顔が赤くなっているのがわかる。 先輩はそんな私を横目で見て、薄く笑みを浮かべた唇を開いた。 「『だ、だめっ…!』ほのかに色づいていた天音の頬が薔薇色に染まっていく。女体の中で一番敏感な場所を半兵衛の舌がそっとつついたからだ。 『だめっ、半兵衛さん、だめですっ…!』 『どうして?』 ねろりと舌で舐めあげ、半兵衛は低く喉を鳴らして笑った。 『君の味がす」 「音読しないで下さい!!!!!!」 |