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「──部屋が予約出来ていない?」

混みあうホテルのロビーの一角。
フロントでチェックインの手続きを済ませようとしていたティエリアは、困惑した声でたった今耳にした言葉を繰り返した。

「大変申し訳ございません。こちらの手違いで、予約の入力が正常に行われていなかったようです」

端末で記録を呼び出した若い女性係員は、申し訳なさそうに説明する。
幸いにも、予約の際に担当していた者に確認を取ったので、ティエリアが予約していた事は間違いなく証明されたのだが──

「一部屋になりますが、ジュニアスウィートを代わりのお部屋としてご用意致しましたので、どうか今夜はそちらをご利用頂けないでしょうか」

「それでは困る。予約していたのは二部屋のはずだ」

「誠に申し訳ございません。本日はパレードに行かれるお客様で満室となっておりまして、ご用意出来るのはジュニアスウィート一つだけなのです」

それは困る、と重ねて訴えようとしたティエリアの腕に、なまえがそっと手で触れた。

「仕方ないよティエリア」

「しかし…」

「今から他のホテルを探してもきっと一杯だろうし、一晩泊まるだけなんだから、ね?」

「…わかった。君がそういうのなら」

今更何を、と言われそうだが、やはり彼としては複雑な心境だったのだ。
明らかに安堵した様子の女性従業員に承諾の意を伝えると、直ぐにベルボーイがやってきて部屋へと案内された。



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