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「なまえです。よろしくお願いします」

二年前。
初めてなまえと顔合わせをしたCBメンバーは驚いた。
東洋人の血のせいか、年齢よりももっと幼く見える、小柄な少女。
そこに亡き妹の面影を見たのか、ロックオンは僅かに沈痛な表情を覗かせ、アレルヤはこんな幼い少女までがと痛ましそうに瞳を伏せた。
刹那だけは平素と変わらぬ態度で頷いてみせたが。

ティエリアもまた驚いてはいたが、外見で人物を判断するのは愚かな行為だと直ぐに思い直した。
確かに目の前の少女は幼いが、彼女の優秀さはヴェーダも認めているのである。

彼女の母はMSの技術師兼整備士、父は医師だった。
彼らはラグランジュポイントの一つにある秘密ドッグで働いていた、非常に優秀な人物だ。
残念ながら、どちらもドッグの爆発事故で命を落として既に故人となっていたが。
なまえは物心つく頃にはもう両親の手伝いをしていたし、本格的に勉強を始めてからも常にトップクラスの成績を修めていた。
資格取得こそまだだが、戦場においてはそんなものよりも経験がものを言う。
宇宙の辺境の秘密ドッグ内において、父とともに限られた医療品での治療を行い、母とともにMSの整備にあたっていた彼女は、それぞれの分野においてはイアンやモレノには及ばないまでも、プトレマイオスには必要な人員だ。

「よろしく頼む」

ティエリアが差し出した手に驚いたのは、なまえではなく周囲の人間達だった。
一番認めそうにない人物が真っ先に受け入れた事が、彼らを動揺させたのだろうとティエリアは思う。
少女は嬉しそうに微笑むと、ティエリアの手を握った。
小さくて柔らかな手だった。



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