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「やっと懐いてくれましたね」

「私そんなにビクビクしてました?」

「してましたよ」

一瞬の迷いもなく断言されてしまった。

「だって、突然だったから…」

「ん?」

真紅の瞳で流し見られて口ごもる。
雀ヶ森レンによる“妹宣言”は、彼がなまえを妹にすると決めた翌日には既に学校中に話が広まってしまっていた。
だが、異論を唱えたり馬鹿にしたりする者は一人もいなかった。
雀ヶ森レンがそう決めたのならそういうことなのだ。
もちろん裏でテツが上手く立ち回ってくれたからというのもある。
血が繋がってないのに急に“妹”だなんて、誰でも戸惑うはずだ。

「それとも、実の兄妹でただれた関係になっているという設定のほうが良かったですか?」

「よ、良くないです!!」

「フフフ…」

レンは機嫌良さそうに含み笑った。
こんな風に時々垣間見えるあざとさが、彼がただの天然な青年などではないということを表している。

「それより、早く食べましょう。もう僕お腹ぺこぺこです」

なまえを下ろしたレンは、期待の眼差しで彼女が持って来た物を見た。
「兄妹は一緒にご飯を食べるものなんですよ」と、分かるような分からないような事を彼に言われて作って来たお弁当である。

「早く、早く」

「はい」

なまえは微笑んでお弁当を広げた。
重箱には、一段ずつおかずが詰められている。

「お兄ちゃんは何が好きですか?」

「じゃあ、唐揚げで!」

なまえは箸で唐揚げを一つ摘まみ、小皿に取り分けた。

「ええっ?食べさせてくれないんですか?」

「えっ!?」

「兄妹はお互いに食べさせ合うものなんですよ」

レンは言って、にこにこと微笑んだ。
仕方ないなぁと笑って、なまえは唐揚げを箸で摘まんでレンの口元へ運ぶ。

「はい、あーんして下さい」

「あーん」

もぐもぐと咀嚼する様は上品なのに、「美味しいです」と瞳を輝かせる様子はまるで遠足に来てお弁当を食べている子供のようだ。

「次はミートボールがいいです」

「はい」

「あーん。ん、これも美味しいですね!」

次は僕の番ですよ、と箸で玉子焼きを運んでくるレンに口を開けて答えながら、これって、兄妹じゃなくてカップルのやることなんじゃ…と疑問思わずにいられなかった。



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