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制服が可愛いのと家が近いからというだけで福原高校を選んだなまえだが、一応カードファイトではそこそこの腕前はある。
が、さすがに幹部になれるほどの実力はない。

今日は香港のハイスクールからゲストが来るという話だった。
なんでもヴァンガードファイト甲子園の前哨戦を行うのだとか。
つまり相当な実力者が来るということだ。

初戦はアサカが相手をするそうで、元々戦力外であるなまえはテツに頼まれて細々とした用事を片付けていたのだが…。

(……なにか…ものすごく見られてるんだけど……)

ゲストとして招かれた生徒の一人、金髪の少年──蒼龍レオンが先ほどからずっとなまえをガン見しているのである。
何かやらかしてしまったかと心配になったが、身に覚えはない。

レンとアサカが話している横で、レオンが、す、と動いた。
真っ直ぐなまえに向かって歩いてくる。

まさか避けるわけにもいかず、あわあわしながら立ちすくんでいると、レオンはすぐ目の前に立った。

「俺の事を覚えているか?」

「えっと…アジア・サーキットで…」

一度会った事がある。
目が合った瞬間、まるで風が吹き抜けたような不思議な感覚を覚えた。
それが凄く印象的でずっと忘れられずにいたのだが、彼との接触はその一度きりだったはずだ。

「名前は」

「苗字、なまえです」

「なまえ。お前も感じたはずだ。運命(さだめ)の風が吹いたのを」

「え、え?」

「もー!だからぁ、あなたに運命を感じたって言ってるんだってば!」

レオンに付き従う双子の少女の片割れがじれったそうに言った。

「それは困りますね」

レンが二人の間に割って入った。
なまえの腰に腕を回して、凄みのある微笑を浮かべてみせる。

「なまえは僕の妹です。そう簡単に、はいそうですか、と渡すわけにはいきません」

その視線を真っ向から受け止め、レオンはフッと笑った。

「俺はもう風を詠み違えることはしない。欲しいものは必ず手に入れる。……必ずな」

二人の間で見えない閃光が飛び散る。

その後、アサカとレオンの前哨戦であるファイト中、牽制なのか、レンはなまえを自分の膝に座らせて抱えたまま離さなかった。

そんな事など意にも介さず涼しい態度でアサカを下したレオンは、レンに抱っこされたままのなまえに微笑んでみせる。

そして、テツはそろそろ胃薬が必要になりそうだった。



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