朝、起きると、ベッドで寝ていた。
当たり前のことかもしれないが、当たり前じゃないのだ。何故なら、昨日布団に入った記憶がないから。
最後に覚えているのは、悟くんと一緒にルームシアターで映画を観ていたという記憶だから、きっと悟くんがベッドまで運んでくれたのだろう。

その悟くんは、私の後ろで、私のお腹に腕を巻き付けて眠っていた。筋肉質な腕はずっしりとしていて重い。
腕を退けようとしたら、もう片方の腕も身体を巻き付いてきて、懐深くにしっかりと抱き込まれてしまった。悟くんの匂いと体温に包み込まれる。

「なんで僕から逃げようとするの?ひどくない?」

「悟くん、おはよう。起きてたんだね」

「おはよ。いま起きた。ねえ、逃げないで」

すりすりと頬ずりしてくる悟くんはまるで大きな子供だ。可愛いけど、そろそろ起きないと。

「朝ごはんの支度するから離して」

「やだ」

出来るだけ優しく言ったのだが、悟くんはむきになったみたいで、離すどころかぎゅうぎゅう抱き締めてくる。身長差、体格差があるので、そうされると身動きもままならない。随分図体のでかい子供だなあ。
というか、さっきからナニか当たってるんだけど。

「したい。ねえ、ダメ?僕のちんこ、こんなになってるんだけど」

「こら、悟くん!押しつけてこないの!」

「ね、しよ?」

「チョコあげないよ?」

「えっ、それはやだ」

悟くんがガバッと起き上がる。私ごと。
やっと悟くんの顔が見られた。
寝起きでも全く損なわれていない美しい顔を両手で優しく挟んでキスをする。
艶々ぷるぷるの唇が柔らかい。
新雪の色をした長い睫毛に縁取られた青い宝石のような双眸がキラキラと期待に輝いていた。

「ちゃんと起きたよ。チョコくれるよね?」


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