「おはよう」

「おは、よう……?」

朝、目が覚めたら隣に傑くんが寝ていた。
今まで寝ていたのだから当たり前だけど髪を下ろしていて黒いスウェット姿だ。
自分の部屋でないことはすぐにわかった。
昨日、傑くんの部屋で一緒に映画を観ていたことは覚えているが、その後の記憶がない。
恐らく、寝落ちしてしまった私を傑くんが自分のベッドに寝かせてくれたのだろう。
それはそうだよね。私の部屋まで運んでいくのは手間だし。
つまり、一晩、傑くんのベッドで彼と一緒に寝てしまっていたということだ。

「ご、ごめんね傑くん!」

「謝ることはないさ。君の体温を感じながら眠ったから暖かかったし、最高に幸せな気分だよ」

慌てて起き上がろうとしたのを引き戻されて、傑くんの腕の中に収められてしまう。

「どうして逃げるんだい?」

「だ、だって……」

恥ずかしいから、ともそもそと呟くと、傑くんが小さく笑った。
耳に傑くんの吐息がかかってくすぐったい。

「私とこうしているのは嫌?」

「嫌じゃない、けど」

「それなら、もう少しこのままでいてくれないか」

うう……。傑くんにお願いされると弱いのを知ってて言っているのだろうか。

「も……もう少しだけなら」

「ありがとう」

ぎゅうっと、でもちゃんと苦しくないくらいの力加減で抱き締められる。
傑くんの匂いと体温に包まれて、ドキドキすると同時に幸せも感じていた。
甘えてもいいのかな。
傑くんの逞しい胸に、すり……と顔をすり寄せると、傑くんが息を呑んだのがわかった。

「そんな可愛らしいことをされてしまうと、いくら私でも我慢が出来なくなってしまうよ」

苦笑とともに背中をするりと撫でられる。
その途端、身体に甘い痺れが走った。
顔を上げると、思っていたよりも近くに傑くんの顔があった。
甘い微笑みを湛えた端正な顔立ちが近づいてくる。
あれ、これって──

「傑、この前借りてた本……って、おい」

バタンと遠慮なくドアを開けた悟くんが私達を見て固まる。

「傑、お前……!」

「違うから!悟くん、違うからね!」

「いや、違わないよ悟。せっかくの甘いひとときを邪魔しないでくれ」

「傑くん!!!」



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