「眠っていて構いませんよ」 始める前に赤屍さんはそう言ってくれたけど、興味のほうが勝っていたので、一部始終を見守っていたが、そろそろ眠気が限界に来ていた。 シュッシュッと小気味良い音を立てながら、ヤスリが一定方向に規則的に動くのを、ぼんやりと眺める。 ナチュラルに整えられた爪は、削りカスをホットタオルで拭き取られてから、尖りがないか確かめるように赤屍さんの唇に触れさせられた。 そうして、仕上げにオイルで指先をマッサージされる。これがまた眠気を誘っているのかと思うくらい心地よい。 爪の手入れを赤屍さんに任せるようになってから、自分でしていた時とは比べ物にならないくらい手入れが行き届いている。 女としてそれもどうかと思うが、赤屍さんのほうが器用で丁寧なので仕方がない。 「終わりました。いかがですか」 「すごく……キレイです」 ぽやぽやとした口調で答えれば、赤屍さんは優しく笑って 「お待たせしてすみません。もう寝ましょうね」 と私を抱き上げた。 寝室に向かって運ばれながら、私は半ば夢の中にいた。 夢現にベッドに降ろされて羽布団を掛けられた気がしたが、もう眠くて目を開けていられない。 「おやすみなさい。良い夢を」 |