正直に言おう。 誘ったのは私のほうからだった。 無責任なことは出来ないと言った彼に、杏寿郎くんがここにいたという確かな想い出が欲しいからと無理を言って行為に及んだのである。 それでも、素面だったらきっぱりと断られていたかもしれない。責任感の強い彼のことだから。 しかし、二人ともいい感じに酔いが回っていた上に、これまでひた隠しにしてきたお互いに相手を欲しいと思う気持ちが限界にきていたせいもあり、一度タガが外れたらもう止められなかった。 杏寿郎くんは最初から最後まで情熱的な恋人だった。 優しくしたいと思いながらも、抗えないほどの熱情が荒々しさとして表れていたが、私はそのことが嬉しかった。 愛されている、求められている、と感じられたから。 最後には、彼の逞しい身体に腕を回し、引き締まった腰に脚を巻き付けて、「中に出して」「杏寿郎くんの、奥にちょうだい」とねだっていた。 「俺は戻らなければならない」 嵐が過ぎ去ったあとのような、満ち足りた感覚と余韻に浸りながら、私を腕に抱いたまま杏寿郎くんが言った。 一切迷いのない口調だった。 炎を映し出したような瞳が、薄闇の中で赤々と燃えて見える。 「出来れば、君にもついてきてもらいたい。この先もずっと君と共に生きていきたいと思うのは、我がままだろうか」 「杏寿郎くん……」 「すぐに答えを出してくれとは言わない。だが、考えておいてほしい」 私は答えられなかった。 その時は、まだ。 |