「──わかりました。赤屍さんの言う通りにします」

「ダメだ!やめろ!」

零さんに大丈夫ですと目線で伝えて彼の傍らから立ち上がり、着衣に手をかける。
トップスを脱いでそれで胸元を隠しながら赤屍さんのもとへ歩いていく。

「良い子ですね。それでいい。貴女さえ手に入れば、彼は生かして帰してあげますよ」

赤屍さんの手が私に触れた、その瞬間。
私は素早くその手首に手錠を掛け、もう片方の輪をベッドの脚に繋いだ。
零さんのポケットから密かに取り出し、服で隠し持っていた手錠だった。

「おやおや」

そうして、赤屍さんの手からメスを奪い、零さんの側へ駆け寄る。

「零さん、これを……!」

私の意図を察した零さんは、メスを受け取り、自らを縛りつけている縄を切っていった。
ばらりと縄が落ち、零さんが立ち上がる。

「まったく、君には驚かされてばかりだよ」

苦笑した零さんが私の肩に自分の上着を掛けてくれる。

「行こう」

零さんは手錠で繋がれた赤屍さんを一瞥すると、私の肩を抱いて部屋から出た。

「ありがとう。君は命の恩人だ」

「そんな」

「だけど、もう二度とあんな無茶はしないでくれ。これからは僕が君を守る」

「はい、零さん。嬉しい……」

私達はお互いの身体に腕を回し、固く抱き締めあった。





「クク……実に面白い。本当に興味深い方ですね、貴女は」

降谷達が立ち去った後。
すっと立ち上がった赤屍の手からバラバラに切り刻まれた手錠が落ちる。
あんなものでこの男を拘束することは出来ない。それでも繋がれたままでいたのは、ひとえに彼女がどう動くか興味があったからだ。

「その度胸に免じて、いまはまだ見逃して差し上げますよ。いまはまだ……ね」





晴れて零さんと結ばれた私は、いま、毎日がとても幸せだ。
相変わらず多忙だけど、零さんは私をとても大切にしてくれている。
あの局面を乗り越えたように、私達はこれからも助け合いながら共に生きていくのだろう。どんなことがあっても、二人一緒に。

「零さんの恋人はこの国ですよね。それはいまも変わっていませんか?」

「もちろん。そして、君は僕にとって唯一無二の大事な妻だ」

私の旦那様が今日も変わらず尊い。



END…?


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