目を開けると、見覚えのある美しく整った顔が目の前にあった。
ぱちくりと瞬きをした私を左右色違いの瞳で見つめていた骸が、ふっと唇を笑ませる。

「おはようございます」

「おはよう??」

私の横に寝そべって頬杖をついている骸から視線を外すと、少し離れた所に壁を背を凭れて立っている恭弥さんの姿が見えた。
えっ、どういうこと?

「何がなんだかわからないという顔をしていますね」

「うん」

「僕達も気がついたらこの部屋の中にいましてね。まあ、とりあえずあれを見て下さい」

骸に手を借りて起き上がると、それはすぐ視界に入ってきた。
十畳以上はあろうかという広い部屋の一角、私が居るのは大きなベッドの上だ。
そこから見える壁の上のほうに看板のようなものが掛けられている。
そこには、『どちらかにチョコを渡さないと出られない部屋』と書かれていた。

「ええ……?」

「ちなみに出口はありません。先ほどから雲雀恭弥が何度も壁を破壊しようと試みていますが、傷ひとつつけられない。どうもただの悪戯というわけではなさそうです」

「リボーンの仕業じゃないかなあ?」

「可能性はありますが、何とも言えませんね」

「赤ん坊の仕業だったら、ただじゃおかないよ」

今までムスッとした顔で黙りこくっていた恭弥さんが言った。

「で、でも、簡単に出られそうで良かったですね!もっと難しい条件だったら困っていたかも」

「君はこれが簡単だって言うの」

「えっ、だって、どちらかにチョコを渡すだけですよね?」

「当然、僕にくれるでしょう?」

恭しく私の手を取って骸が艶然と微笑んだ。
その骸の手をぺしっとはたき落として恭弥さんが私を睨み付ける。

「冗談じゃない。この男にあげて僕がもらえないなんて絶対許さないよ」

「え、えー!?」

二人とも自分がもらうつもりでいるらしく、譲るつもりはなさそうだ。

「この子にチョコをもらうのは僕だ」

「いいえ、僕ですよ。潔く諦めたらどうです。チョコひとつでみっともない」

「それはこっちの台詞だよ。往生際が悪いな」

ちっとも簡単な問題じゃなかった。


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